なぜ出産は保険適用じゃないのはおかしいですか？

なぜ出産は保険適用じゃないのはおかしいのか？ ～命の誕生は「病気」ではない、しかし「リスク」と「社会的意義」を見過ごすな～

「出産は病気ではないから保険適用外」。確かに、妊娠・出産は自然な生理現象であり、病気や怪我とは性質が異なります。しかし、この一言で片付けてしまうには、あまりにも多くの重要な側面が見過ごされているのではないでしょうか。

まず、出産には計り知れないリスクが伴います。母体は生命の危機に瀕する可能性があり、妊娠高血圧症候群、子癇、弛緩出血、羊水塞栓症など、様々な合併症のリスクを常に抱えています。また、新生児も無事に生まれてくるためには様々なケアが必要であり、早産や低体重児、先天性の疾患など、予期せぬ事態が発生する可能性も否定できません。これらのリスクに対応するためには高度な医療技術や設備が必要となり、結果として高額な費用が発生します。

次に、出産は社会的な意義を持つ行為であるという点です。未来を担う子どもを産み育てることは、社会全体の存続と発展に不可欠な貢献です。少子高齢化が深刻な問題となっている現代において、出産を奨励し、経済的な負担を軽減することは、国全体の課題解決に繋がります。出産費用が経済的な理由で負担となり、出産を諦めざるを得ない状況は、個人の幸福を損なうだけでなく、社会全体の損失と言えるでしょう。

さらに、現在の保険制度における不公平感も無視できません。例えば、不妊治療は条件付きで保険適用されるようになりました。これは、不妊という「病気」を治療するという側面があるためです。しかし、出産もまた、母体や胎児の健康を維持し、安全な出産を目指すという点で、医療行為と密接に関わっています。病気と出産という線引きがあまりにも曖昧であるにも関わらず、経済的な負担だけが出産に集中している現状は、納得し難いのではないでしょうか。

もちろん、出産を完全に保険適用とするには、財源の確保や制度設計など、多くの課題が存在します。しかし、出産が持つリスク、社会的意義、そして保険制度における不公平感を考慮すると、出産を「病気ではないから保険適用外」と一蹴するのではなく、より多角的な視点から議論を進めるべきです。

例えば、出産一時金の増額や、出産に関する医療費の補助制度の拡充、さらには出産保険の導入など、様々なアプローチを検討することで、出産に対する経済的な負担を軽減し、安心して出産できる社会を実現できるはずです。

命の誕生は、未来への希望の光です。その光を灯し続けるために、社会全体で出産を支援する仕組みを構築していく必要があります。