事故が物損事故か人身事故かを決めるのは誰ですか？

事故の分類：物損事故と人身事故、その判断基準とは？

交通事故は、その結果によって「物損事故」と「人身事故」に分類されます。一見単純な分類のようですが、実際にはその判断には複雑な要素が絡み合い、迅速かつ正確な判断が求められます。では、一体誰が、どのようにしてこの分類を決定するのでしょうか？

結論から言えば、事故の性質、つまり物損事故か人身事故かを最終的に判断するのは警察です。一般的には、事故当事者や目撃者からの通報を受け、警察官が現場に急行し、調査を行います。しかし、この「判断」は、当事者の主張や感情論に基づくものではなく、客観的な事実と証拠に基づいて行われることが重要です。

警察官は現場に到着後、まず事故の状況を詳細に把握します。具体的には、以下の点を重点的に調査します。

• 被害状況の確認: 車両の損傷状況、道路状況、周辺の状況など、事故現場の状況を綿密に確認します。物損事故であっても、目視では確認できない損傷がある可能性もあるため、慎重な調査が不可欠です。
• 関係者の聞き取り: 事故当事者、目撃者など、関係者から事故発生の状況、事故に至るまでの経緯、事故当時の状況などについて、詳細な聞き取りを行います。この際、それぞれの主張に偏ることなく、客観的な情報を収集することが求められます。矛盾点があれば、それを明らかにする必要があります。
• 証拠の収集: 必要に応じて、証拠となる写真や動画の撮影、現場に残された破片などの証拠物の採取を行います。ドライブレコーダーの映像や防犯カメラの映像なども重要な証拠となります。これらの証拠は、事故の状況を客観的に判断する上で非常に重要な役割を果たします。
• 負傷者の有無の確認: もっとも重要なのは、人身傷害の有無です。怪我の程度に関わらず、人が負傷している、もしくは負傷した可能性がある場合は、人身事故として扱われます。軽微な擦り傷であっても、医師の診断が必要となる場合があります。意識を失った、吐き気がある、痛みを訴えているなど、些細な症状であっても、警察は人身事故として扱うべきです。

これらの調査に基づき、警察は事故報告書を作成します。この報告書には、事故の状況、当事者の情報、負傷者の有無など、事故に関する重要な情報が記載されます。そして、この報告書に基づき、事故が物損事故か人身事故か、そしてその程度が決定されます。

重要なのは、当事者の主張が必ずしも判断基準にならないということです。例えば、加害者が「相手は怪我をしていない」と主張しても、警察が現場の状況や聞き取り調査から負傷の可能性があると判断すれば、人身事故として処理されます。逆に、被害者が「大怪我をした」と主張しても、客観的な証拠がない場合は、その主張が必ずしも認められるとは限りません。

警察の判断は法的根拠となります。よって、事故当事者は警察の判断を尊重し、必要であれば、弁護士などの専門家の助言を受けることが重要です。物損事故と人身事故では、処理方法や責任の所在、保険金の支払い方法など、大きく異なる点が多いため、正確な分類は非常に重要な意味を持ちます。 警察の調査に協力し、正確な情報を提供することで、迅速かつ適切な事故処理に繋がることを理解しておくべきでしょう。