ターミナルケア加算の訪問看護は2024年度にどうなる?

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2024年度の介護報酬改定では、ターミナルケア加算の訪問看護の単位数が500単位増えました。地域によって1単位の単価は異なりますが、1単位10円の地域では加算額が25,000円となり、ターミナルケア療養費と同等の金額になります。ただし、予防訪問看護は対象外です。

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2024年度、訪問看護におけるターミナルケア加算:変化と課題

2024年度の介護報酬改定において、訪問看護におけるターミナルケア加算は大きな変更を受けました。具体的には、単位数が500単位増加した点が注目されます。これは、これまで以上に充実したターミナルケアを提供できる可能性を示唆する一方で、その運用や課題についても深く検討する必要があることを意味します。

従来、訪問看護におけるターミナルケアは、限られた時間とリソースの中で、患者の苦痛軽減や尊厳ある最期を迎えるためのサポートを提供することに苦労してきました。今回の改定は、この状況改善への大きな一歩と言えるでしょう。500単位の増加は、より多くの時間と人員を確保できる可能性を高め、質の高いケアの実現に繋がるはずです。例えば、これまで時間的な制約から十分に行えなかった精神的なケアや家族への支援に、より多くの時間を割くことが可能になります。

しかし、500単位増加の効果を最大限に発揮するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。まず、地域差の問題です。1単位あたりの単価は地域によって異なり、10円という数値はあくまで一例です。地域によっては、単価が低く、加算額が期待値を大きく下回る可能性も考慮しなければなりません。単価の低い地域では、500単位の増加による効果が限定的となり、十分なケア提供の阻害要因となる可能性があります。

次に、対象となる訪問看護の範囲です。今回の改定では、予防訪問看護はターミナルケア加算の対象外となっています。予防訪問看護とターミナルケア訪問看護の明確な線引きは、現場において混乱を招く可能性があります。特に、終末期への移行期においては、予防的なケアとターミナルケアが密接に連携する必要があるため、この区別が現場の負担増加に繋がる懸念があります。明確な基準とガイドラインの策定、そして現場への周知徹底が不可欠です。

さらに、加算額がターミナルケア療養費と同等になったという点も、複雑な問題を含んでいます。療養費と加算の併用は可能なのか、どのようなケースでどちらを選択すべきなのか、現場では明確な判断基準が求められます。この点についても、厚生労働省からの明確な指針が必要でしょう。

加算の増加は、現場における事務作業の増加も意味します。適切な記録作成や報告書作成は、加算の請求と、ケアの質の担保に不可欠です。しかし、事務作業の増加は、本来のケア提供に割ける時間を減少させる可能性もあります。そのため、ICTを活用した効率的な事務システムの導入や、事務作業の軽減策の検討が必要となります。

最後に、今回の改定は、質の高いターミナルケアを提供するための大きな一歩ではありますが、その効果を最大限に発揮するには、関係者間の連携強化が不可欠です。医療機関、介護施設、訪問看護ステーション、そして家族が連携し、個々の患者のニーズに合わせた適切なケアを提供していくことが重要です。

2024年度の訪問看護におけるターミナルケア加算の増加は、歓迎すべき変化ですが、同時に多くの課題も孕んでいます。これらの課題を解決し、制度の改善を図ることで、真に質の高いターミナルケアが提供できる社会を目指していく必要があります。関係各機関の取り組みと、現場の意見を反映した制度運営が強く求められています。