本人との続柄 どっち？

本人との続柄、どっち？ 家族の形と戸籍の壁

「世帯主との関係性を記入します。自分が世帯主なら「本人」、配偶者なら「夫」または「妻」、親が世帯主なら「子」、その他の場合は該当する続柄を記入してください。」 こんな質問を目にすると、戸惑う人もいるかもしれません。一見シンプルな設問ながら、現代の多様な家族の形に当てはまらないケースも少なくないからです。

伝統的な家族像、つまり夫婦と子どもから成る核家族であれば、「本人」「夫」「妻」「子」で事足りるでしょう。しかし、単身世帯の増加、晩婚化、事実婚の増加、LGBTQ+の方々のパートナーシップ、そして複雑な家族関係など、現代社会における家族の在り方は多岐に渡ります。これらの変化に伴い、「世帯主との関係性」を一言で表すことが難しくなっているのです。

例えば、祖父母と同居している場合、「子」なのか「孫」なのか、どちらを記入すべきでしょうか？また、親と同居している未婚の成人であれば「子」で問題ないかもしれませんが、既に独立した世帯を持ちながら、親の介護のために同居している場合はどうでしょうか？「子」と記入するのは適切でしょうか？あるいは、ルームシェアをしている場合、世帯主との関係性をどのように表現すれば良いのでしょうか？友人、知人、それとも単に同居人？

こうした戸惑いは、戸籍制度に基づいた「家族」の定義と、現実の生活における「家族」の認識のズレから生じていると言えるでしょう。戸籍は血縁関係を重視した制度であり、多様な家族の形を反映しきれていません。そのため、戸籍上の続柄と、実際の関係性に齟齬が生じるケースも少なくありません。

では、このような状況下で、どのように「世帯主との関係性」を記入すれば良いのでしょうか？公式な書類であれば、戸籍上の続柄を記入するのが原則でしょう。しかし、現実の家族関係を正確に伝えたい場合は、補足説明を加えることも検討すべきです。例えば、「子（介護のため同居）」、「孫（祖父母と同居）」、「同居人（友人）」のように、括弧内に具体的な関係性を追記することで、誤解を防ぐことができます。

また、アンケートや調査など、公式書類ではない場合は、より柔軟な対応が可能です。「パートナー」「内縁の妻」「事実婚の夫」など、戸籍上の続柄にとらわれず、実際の関係性を表現する言葉を選ぶことができます。大切なのは、自分の状況に合った適切な表現を選び、必要に応じて補足説明を加えることです。

今後、社会の多様化が進むにつれて、家族の形もさらに変化していくでしょう。それに伴い、戸籍制度や関連する手続きも見直される必要があるかもしれません。現時点では、既存の枠組みに当てはまらないケースもあることを認識し、それぞれの状況に合わせて柔軟に対応していくことが重要です。

「本人との続柄」というシンプルな設問の裏には、現代社会における家族の複雑な現実が隠されています。この設問に戸惑いを感じた時こそ、改めて「家族とは何か」を考え、多様な家族の形を認め合う社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えてみる必要があるのではないでしょうか。