籍を入れないとどうなる？

籍を入れないとどうなる？―事実婚のメリットとデメリット、そして現実的な課題

結婚。多くの人にとって人生における大きな転換期であり、喜びと希望に満ちたイベントです。しかし、必ずしも婚姻届を提出して「法律上の夫婦」になることが正解とは限りません。近年、婚姻届を提出せずに事実婚（内縁）を選択するカップルが増えています。では、籍を入れないと具体的にどのような影響があるのでしょうか。法律面、経済面、そして心理面といった多角的な視点から考察してみましょう。

まず、最も大きな違いは法律上の夫婦としての権利・義務の有無です。婚姻届を提出した夫婦には、相続、税金、扶養、親権など、法律によって様々な権利と義務が認められます。例えば、配偶者が亡くなった場合、法律婚の配偶者は相続人として財産を相続する権利が明確に保障されています。一方、事実婚の場合、相続権は法律で明確に規定されておらず、遺言書がない限り、相続を巡る争いが発生する可能性が高くなります。税金に関しても、扶養控除や配偶者控除といった税制上の優遇措置は、法律婚の夫婦にのみ適用されます。事実婚のカップルは、これらのメリットを享受できません。

また、医療面においても、配偶者として患者の意思決定に関与できる範囲が異なります。緊急手術など、配偶者の同意が必要な場面で、事実婚の配偶者は、法律上の配偶者と比較して意思決定の権限が弱く、手続きが複雑になる場合があります。

経済面では、共同生活における財産分与や、離婚に相当する状況になった際の財産分割が、法律婚よりも複雑で、当事者間の合意が不可欠となります。明確な法的根拠がないため、裁判になった場合、双方の主張が対立し、長期間にわたる紛争に発展する可能性も否定できません。 特に、不動産の共有やローンなどの契約関係では、明確な合意と証拠書類の整備が重要になります。

しかし、事実婚を選択するメリットも存在します。まず、自由度の高さです。法律婚では、手続きや届出など、煩雑な手続きが多く、時間や労力を要します。事実婚であれば、そのような手続きを省くことができ、より自由な関係を築きやすくなります。また、離婚に関する手続きも、法律婚に比べてシンプルです。

さらに、現代社会における多様な価値観を反映し、事実婚は「家族」のあり方を再定義する可能性を秘めています。従来の家族観にとらわれず、個々の事情や価値観に合わせた柔軟な関係を築く選択肢として、事実婚は重要な意味を持ちます。

しかし、強調しておきたいのは、事実婚は「法律婚の抜け穴」ではないということです。法的保護が薄い分、当事者間の信頼関係と、綿密な合意に基づく契約が不可欠です。共同生活におけるルールや財産分与の方法など、可能な限り詳細な合意を文書化し、将来にわたるトラブルを未然に防ぐための準備が必須となります。 弁護士などの専門家に相談し、法的リスクを最小限に抑える対策を講じることも重要です。

結論として、事実婚はメリットとデメリットを双方に持つ選択です。法律婚に比べて法的保護が弱いため、リスクを理解し、綿密な準備と当事者間の強い信頼関係が不可欠です。 自分たちの状況や価値観を十分に考慮し、慎重に検討する必要があるでしょう。 そして、専門家のアドバイスを得ながら、将来にわたって後悔しない選択をすることが大切です。