結婚したくない人はどれくらいの割合ですか？

結婚を選ばない人生：増加する未婚率とその背景

生涯未婚率の上昇は、現代日本の社会構造を映し出す鏡とも言えるでしょう。2020年の調査で男性の約28%、女性の約18%が生涯未婚という数字は、もはや無視できない社会現象です。少子高齢化が加速する日本において、この未婚化の波は、労働力不足や社会保障制度の維持といった課題に暗い影を落としています。しかし、この数字の背後には、単なる経済的な問題だけでなく、多様化する価値観やライフスタイルの変化が複雑に絡み合っています。

かつて結婚は、人生における当然の通過点と捉えられていました。家制度の残像も色濃く、特に女性にとっては「良妻賢母」という固定観念が根強く存在していました。しかし、高度経済成長期を経て、女性の社会進出が進み、経済的自立が可能になるにつれ、結婚に対する意識も変化し始めました。結婚は「しなければいけないもの」から「しても良いもの」へ、そして「しなくても良いもの」へと、徐々にその位置づけを変えてきたのです。

現代社会では、個人の幸福や自己実現を重視する価値観が浸透しています。結婚によるメリットよりも、自由な時間や経済的な余裕を優先する人、仕事や趣味に没頭したい人、人間関係の煩わしさから解放されたい人など、結婚を選ばない理由は多岐に渡ります。また、結婚生活における家事や育児の負担、配偶者との価値観の相違といったリスクを敬遠する声も少なくありません。

さらに、インターネットやSNSの普及も未婚率の上昇に影響を与えていると考えられます。オンラインで様々な情報やコミュニティにアクセスできるようになり、結婚以外のライフスタイルの可能性が広がったのです。一人で楽しめる趣味や活動、オンライン上での人間関係の構築など、結婚という枠組みに囚われずに充実した人生を送る選択肢が増えました。

経済的な要因も無視できません。非正規雇用の増加や賃金格差の拡大により、結婚や子育てに必要な経済的基盤を築くことが困難になっている若者が増えています。結婚資金や住宅費、子育て費用などを考えると、結婚に踏み切れないという現実的な問題も存在します。

もちろん、結婚を望む人が減ったわけではありません。理想のパートナーとの出会いの機会の減少、晩婚化の影響なども、未婚率の上昇に繋がっています。結婚相談所やマッチングアプリの利用が増えているのも、こうした背景を反映していると言えるでしょう。

生涯未婚率の上昇は、日本の社会構造が大きく変化していることを示す一つの指標です。結婚という制度の意義や価値観が多様化する中で、個人がそれぞれのライフスタイルを選択できる社会、そして、結婚を選ばない人々も安心して暮らせるような社会の構築が求められています。結婚の有無に関わらず、誰もが自分らしい人生を歩み、社会に貢献できるようなインクルーシブな社会を目指していく必要があるでしょう。これは、少子高齢化という大きな課題に立ち向かうためにも、不可欠な視点です。