結婚しない夫婦のことを何といいますか？

日本では、結婚届を出さずに夫婦として生活するカップルのことを「事実婚」または「内縁関係」といいます。しかし、この「事実婚」という単語だけで彼らの多様な実態を完全に捉えきれているとは言えません。単なる言葉の定義を超え、彼らの生活、選択、そして社会における立場を深く理解することが重要です。

事実婚のカップルは、法律上の婚姻関係にはないものの、互いに深く愛し合い、生活を共にするという強い意思を持って生活しています。戸籍上は独身のままですが、経済面では共有口座を持ったり、家計を共同で管理したりすることが多く、まるで法律婚の夫婦と変わらない生活を送っているケースも珍しくありません。 一緒に住まいを構え、家事や育児を分担し、老後も共に過ごしていくことを約束し、人生を共に歩むことを選び取っています。

しかし、この「事実婚」という選択は、法律上の婚姻と比べて、様々な制約を伴います。最も大きな違いは、法律的な保護の不足です。相続においては、法定相続人には該当せず、遺産相続は困難な場合が多いです。また、配偶者に対する扶養義務や相続権といった法律上の権利・義務が認められていないため、病気や事故など、予期せぬ事態が起こった際の法的保護が不十分になります。子供がいる場合、親権に関しても複雑な手続きが必要となる可能性があります。

さらに、社会的な認知度も課題です。事実婚のカップルは、法律婚のカップルとは異なり、社会制度からの恩恵を受けにくいのが現状です。例えば、住宅ローンや保険の適用において不利な扱いを受けるケースもあります。医療面では、配偶者への面会や入院時の手続きにおいて、スムーズに進まない可能性も考えられます。 これらの現実的な問題に直面し、時に社会的な偏見や理解不足に苦しむケースもあるでしょう。

では、なぜ彼らは事実婚を選ぶのでしょうか？その理由は様々です。結婚制度への抵抗感、それぞれの自由を尊重したいという考え、宗教上の理由、経済的な理由、あるいは過去の結婚の失敗など、個人やカップルの事情によって多様な背景があります。 大切なのは、彼らが結婚制度に縛られることなく、自分たちにとって最適な生き方を選んでいるという事実です。

事実婚は、個人の自由と多様性を尊重する社会の到来を象徴する側面も持っています。しかし同時に、社会全体として、事実婚のカップルが安心して生活できるよう、法的保護や社会的な認知度を高めるための制度整備が不可欠です。事実婚を取り巻く現状を正しく理解し、彼らの選択を尊重する社会こそが、真に豊かな社会と言えるのではないでしょうか。 単なる「事実婚」というラベルではなく、一人ひとりの背景、選択、そして未来への希望に目を向けることが、より良い共存社会を築く上で重要なのです。 今後、少子高齢化や多様な家族形態の増加に伴い、事実婚を取り巻く状況は大きく変化していく可能性があります。 柔軟で包括的な社会システムの構築が、ますます求められていくでしょう。