京王電鉄のレール幅は？

ちょっと変わった京王線の「馬車軌条」 – そのレール幅に隠された物語

京王電鉄の電車に乗っていると、ふと「他の電車と何かが違う」と感じることはありませんか？ それは、もしかしたら京王線のレール幅、つまり「軌間」が関係しているかもしれません。 京王線の軌間は1372mm。一見すると何気ない数字ですが、実はこの数値は、日本の鉄道史においてちょっと特別な意味を持っています。

一般的な日本の鉄道は、1067mmの狭軌を採用している路線が多く、新幹線は1435mmの標準軌です。京王の1372mmは、これらのどちらにも属さない、いわば「亜幹線」的な存在と言えるでしょう。 この1372mmという軌間は、「馬車軌条（ばしゃきじょう）」とも呼ばれます。その名の通り、かつて馬車鉄道で用いられていた規格に由来するもので、明治時代に開業した鉄道の一部で採用されました。なぜ京王電鉄がこの軌間を選んだのか？ それには、当時の背景が深く関わっています。

京王電鉄の前身である京王電気軌道は、当初、路面電車として計画されました。路面電車は道路上を走るため、できるだけ道路幅を圧迫しないように、狭い軌間が選ばれる傾向にありました。しかし、京王電気軌道は、将来的な発展を見据え、路面電車よりも高速で大量輸送が可能な鉄道を目指しました。そこで、狭軌よりも安定性が高く、標準軌よりも建設コストを抑えられる1372mmという軌間が採用されたのです。

この軌間の選択は、京王電鉄の独自性を生み出す一方で、いくつかの制約ももたらしました。特に、他の鉄道会社との相互乗り入れは、軌間の違いによって困難になります。新幹線はもちろんのこと、JRや他の私鉄との直通運転は、基本的に不可能となります。そのため、京王線は新宿駅でJR線と接続しているものの、乗り換えが必要となるのです。

しかし、この制約を逆手に取って、京王電鉄は独自の発展を遂げてきました。新宿を中心とした都心へのアクセスを強化し、沿線住民の生活を支える鉄道として、確固たる地位を築き上げてきたのです。

京王線の電車に乗る際には、ぜひ足元に注目してみてください。そこには、明治時代から続く鉄道技術の歴史と、京王電鉄の個性的な軌間が隠されています。そして、このちょっと変わった「馬車軌条」が、京王電鉄を、他の鉄道とは一味違う魅力的な存在にしているのです。