録音レベルはdBで何dBですか？

なぜ-6dBから-12dBが最適なデジタル録音レベルなのか？～クリッピング回避とダイナミックレンジの確保～

デジタル録音において、最適な録音レベルは-6dBから-12dBと言われています。なぜ、最大値である0dBではなく、この範囲が推奨されるのでしょうか？ その理由は、主にクリッピングの回避とダイナミックレンジの確保という2つの重要な要素にあります。

1. クッピングの回避：0dBを超えると何が起こる？

デジタルオーディオの世界では、0dBFS (dB Full Scale) が最大値であり、これを超える信号は「クリッピング」という現象を引き起こします。クリッピングとは、簡単に言えば、信号が上限値に達してしまい、それ以上の情報を記録できなくなる状態です。これは、アナログレコードで針飛びが発生するようなもの、または写真で露出オーバーになった箇所が真っ白になるようなものとイメージすると分かりやすいかもしれません。

クリッピングが発生すると、波形の頂上が削り取られたような状態になり、音質は著しく劣化します。耳障りなノイズや歪みが生じ、元の音源のニュアンスや繊細さを損なってしまいます。特に音楽制作においては、クリッピングは致命的な問題となる可能性があります。

2. ダイナミックレンジの確保：余裕を持たせることの重要性

-6dBから-12dBの範囲で録音することで、クリッピングを回避するだけでなく、ダイナミックレンジを最大限に活用することができます。ダイナミックレンジとは、録音できる最も小さい音と最も大きい音の差のことです。

もし、0dBギリギリで録音してしまうと、予期せぬ音量のピークが発生した場合に、簡単にクリッピングしてしまいます。また、録音後に音量を調整しようとしても、すでにクリップしている部分を修正することはできません。

しかし、-6dBから-12dBの余裕を持たせて録音しておけば、録音後に音量を上げたり、エフェクトをかけたりする際に、クリッピングを気にすることなく作業を進めることができます。また、ダイナミックレンジを最大限に活かすことで、より自然で豊かな音質を実現することができます。

具体的な調整方法：録音対象に合わせた臨機応変な対応

最適な録音レベルは、録音する音源の種類や音量によって異なります。例えば、繊細なアコースティックギターの録音と、激しいドラム演奏の録音では、適切なレベルが異なります。

一般的には、以下の点に注意して録音レベルを調整します。

• ピークメーターを注視する: レコーディングソフトやオーディオインターフェースに表示されるピークメーターを確認し、録音中に0dBFSを超えないように調整します。
• テスト録音を行う: 本番録音の前に、必ずテスト録音を行い、レベルが適切かどうかを確認します。
• 余裕を持たせる: 予期せぬピークが発生する可能性を考慮し、少し余裕を持たせたレベルで録音することを心がけます。
• 録音後に調整する: 必要に応じて、録音後にゲイン調整やコンプレッサーなどのエフェクトを使用して、音量を調整します。

まとめ

-6dBから-12dBという推奨録音レベルは、クリッピングを回避し、ダイナミックレンジを最大限に活用するための、長年の経験に基づいた知恵です。この範囲で録音することで、クリアで歪みのない、高品質なデジタル録音を実現することができます。録音対象や環境に合わせて適切なレベルを調整し、理想的なサウンドを手に入れましょう。