VORとは何の略ですか？

VORとは？航空機の安全を支える「目」となる電波航法

VORは、VHF Omnidirectional Range（超短波全方向式無線標識）の略称です。航空の世界において、パイロットが自身の位置を知り、安全な航路を維持するための重要なツールとして長年にわたり活躍してきました。たとえるなら、VORは航空機にとっての「目」のような存在と言えるでしょう。

具体的にVORは何をするのでしょうか？　地上に設置されたVOR局は、360度全方向に特殊な電波を発信します。この電波を受信した航空機は、VOR局からの相対的な角度、つまり方位（ラジアル）を知ることができます。

想像してみてください。あなたが広い砂漠の真ん中にいて、目印になるものが何もありません。しかし、ある方向を指し示す電波塔が遠くに建っているとします。その電波塔からの方位を知ることで、自分の位置を特定し、目的地へ向かう方向を定めることができます。VORはまさに、これと同じ役割を航空機に対して果たしているのです。

VOR局は全国各地に設置されており、航空地図にはVOR局の位置と周波数が記載されています。パイロットは飛行計画を作成する際、VOR局を通過するルートや、複数のVOR局からの方位線を利用して交差点を設定するなど、VORを積極的に活用します。

現代ではGPSなどの高度な航法システムが登場していますが、VORは今でも重要なバックアップシステムとして機能しています。GPS信号が途絶えた場合や、何らかの障害によってGPSが利用できなくなった場合でも、VORを利用することで、安全な飛行を継続することが可能です。

VORの仕組みは一見複雑に見えますが、その原理は比較的シンプルです。VOR局は、基準位相信号と可変位相信号という2種類の電波を同時に発信します。基準位相信号は360度全方向に均一に発信される一方、可変位相信号はVOR局を中心として回転しながら発信されます。航空機は、基準位相信号と可変位相信号の位相差を測定することで、VOR局からのラジアルを割り出すのです。

VORは、航空機の安全運航を支える上で欠かせないシステムであり、パイロットにとっては信頼できるパートナーと言えるでしょう。技術の進歩とともに、VORの役割は変化しつつありますが、その重要性は今後も変わることはないでしょう。