「ご拝読しました」は敬語として正しいですか?

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「拝読しました」は単体では不自然で、誰からどのような文章を拝読したのかを具体的に示す必要があります。「メールを拝読しました」「御著書を拝読しました」のように具体的な対象を明記し、感謝の意を表す用法です。「拝読」は尊敬語であり、感謝の気持ちを込めた丁寧な表現として適切に用いることが大切です。誤用を防ぐため、文脈を明確にしましょう。

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「ご拝読しました」は敬語として正しいか?という問いに対しては、単純に「正しい」とも「間違っている」とも言えず、文脈と使用状況に大きく依存します。上記の簡潔な説明は正しい方向性を示していますが、より深く掘り下げて考察する必要があります。

まず、「拝読」という言葉自体が持つ意味を理解することが重要です。これは、相手が書いた文書、特に文章としての価値や品格が高いものを読み終えたことを表す謙譲語です。単なる手紙やメールだけでなく、論文、小説、報告書、あるいは重要な書類など、読み手にとって敬意を払うべき対象である場合に用います。したがって、「ご拝読しました」は、相手が作成した文書を自分が読んだことを謙遜しつつ、その文書に対する敬意を表す表現と言えるでしょう。

しかし、問題点は「ご」の付加にあります。「ご」は相手側の行為や状態を丁寧に表現する接頭辞です。例えば「ご苦労様でした」や「ご検討ください」のように、相手への配慮を表す際に使われます。しかし「拝読」は既に謙譲語であるため、「ご」を付けることで二重敬語となり、不自然で、場合によっては相手に失礼にさえ聞こえる可能性があります。

「メールを拝読しました」や「御著書を拝読しました」のように、具体的な対象を明示することで、「拝読」の謙譲のニュアンスが明確になり、自然な表現となります。この場合、「ご」は不要です。対象が明確であれば、相手への敬意は「拝読」という語句自体で十分に伝えられます。

では、「ご拝読しました」が全く使えないかというと、そうではありません。例えば、複数の文書をまとめて読んだ場合、あるいは、具体的な文書名や送り主が不明瞭な場合など、文脈によっては使用できる可能性があります。しかし、そのような状況は稀であり、一般的には避けた方が無難です。

さらに、「ご拝読しました」を用いる場合、感謝の意を伝えることが必須となります。「ご拝読しました」だけでは、単に読んだという事実しか伝えず、冷たい印象を与えます。「ご拝読いただき、ありがとうございました。」のように、感謝の言葉を添えることで、丁寧で好ましい表現となります。

結局、「ご拝読しました」は、敬語として正しいか正しくないかという単純な二択の問題ではなく、文脈、対象、そして感謝の言葉の有無によって、その適切さが大きく変わる微妙な表現なのです。誤解や失礼を避けるために、より自然で丁寧な表現である「拝読しました」を基本とし、具体的な対象を明記し、感謝の言葉を添えることを強く推奨します。 「ご」を付け加えることで生まれる二重敬語の違和感や、文脈によっては生じる不自然さを理解し、適切な敬語表現を選択することが、円滑なコミュニケーションに繋がります。

最後に、ビジネスシーンにおいては、より簡潔で、相手に負担をかけない表現を選ぶことも重要です。例えば、「メール拝見しました」や「資料拝読しました」など、より簡略化された表現も有効です。状況に応じて適切な表現を選択することで、より効果的なコミュニケーションを図ることが可能になります。 常に相手への配慮を忘れずに、適切な敬語を選択することが大切です。