舞台の上座はどちらですか?

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舞台における上座は、一般的に出入口から最も遠い席を指します。これは、出入り口に近い席が下座となる考え方に基づいています。舞台に限らず、部屋や席次における上座・下座の基本原則として覚えておくと良いでしょう。

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舞台の上座はどちらか?一見単純なこの問いには、実はいくつかの解釈が存在し、絶対的な答えはありません。なぜなら、「上座」の定義自体が、場面や文化、そして観点によって揺らぐ曖昧さを含んでいるからです。 一般的に言われる「出入口から最も遠い席」という定義は、あくまで一つの基準に過ぎず、必ずしも普遍的なものではないことを理解しておく必要があります。

まず、客席における上座を考えましょう。前述の通り、多くの場合、出入口から最も遠い、つまり舞台に近い席が上座とされます。これは、最も舞台の演技を近くで観賞できる、つまり「良い席」であるという考え方から来ています。 演劇の世界では、舞台監督や演出家が客席全体を俯瞰した上で、舞台との距離感、視界の広さ、そして音響のバランスなどを考慮して、座席の優劣を判断することがあります。そのため、単に舞台に近いというだけでなく、舞台中央やや後方、あるいは特定のブロックの席が上座と見なされるケースも存在します。

しかし、この「出入口から遠い=上座」という考え方は、すべてのケースに当てはまるわけではありません。例えば、能楽堂など、舞台と客席の配置が特殊な場所では、この原則は通用しません。能楽堂では、舞台に最も近い席が必ずしも上座ではないどころか、むしろ下座とされる場合もあります。これは、能楽の演目や演出、そして観客の鑑賞姿勢などに深く関わっており、単純に距離だけで判断することはできません。 歌舞伎座のような伝統的な劇場でも、客席の配置や演目の種類によっては、一般的な「出入口から遠い」というルールが当てはまらない可能性があります。

さらに、舞台上における上座を考えてみましょう。客席から見た上座とは異なり、舞台上では、役者の立ち位置、演出意図、そして舞台装置との関係性など、より複雑な要素が絡み合います。例えば、歌舞伎では、舞台中央やや後方、または客席に近い位置が上座とされるケースもあります。これは、役者の序列や物語上の重要性、そして観客への視覚的なアピールなどを考慮した結果です。 演劇の種類によって、上座の定義が大きく変わるのも特徴です。シェイクスピア劇のような、舞台全体を使う演出が多い演劇では、上座という概念が曖昧になることもあります。

結局のところ、舞台の上座は、絶対的な位置ではなく、相対的な概念であると言えます。その場における状況、文化、そして伝統、さらには演出家の意図などを総合的に考慮して判断する必要があるのです。 「出入口から遠い席」という基準は、一つの目安として役立ちますが、それだけで上座を決定づけるのは、多くの場合、不十分であるということを理解しておきましょう。 真の上座を理解するには、その舞台芸術への深い理解と、現場での感覚が不可欠なのです。 単なる座席位置だけでなく、その舞台における意味合いを深く考えることが、真の上座を理解する鍵となるでしょう。