5通とは何ですか?

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仏教でいう五通とは、超能力のような五つの力のこと。思い通りに移動できる神足通、見えないものを見通す天眼通、あらゆる音を聞き取る天耳通、他人の心を読む他心通、前世の記憶を知る宿命通が含まれます。

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五通:仏教における超常能力の探求、そしてその限界

仏教において「五通」とは、修行によって獲得されるとされる五つの超常能力を指します。しばしば超能力と訳されるこれらの能力は、煩悩を離れた高度な悟りの境地に至った者にのみ許されるものとされ、仏道修行の究極目標である涅槃への到達とは直接的な関係を持たないながらも、その到達を助ける手段、あるいは到達後の境地の理解を深めるためのツールとして捉えられてきました。

神足通(じんそくつう)、天眼通(てんげんつう)、天耳通(てんにうつう)、他心通(たしんつう)、宿命通(しゅくめいつう)。これら五つの通はそれぞれ、異なった側面から現実世界、そしてその背後にある真理へのアクセスを可能にすると言われています。

神足通は、空間的な制限を超越する能力です。瞬間移動や自在な飛行など、物理的な制約を無視した移動が可能になります。これは単なる移動能力ではなく、時空を超越する可能性を秘めていると解釈されることもあります。例えば、極めて遠い場所への瞬時の移動だけでなく、過去や未来への移動さえも暗示しているという見方もあります。しかし、神足通はあくまで手段であり、目的ではありません。悟りを開くための、より効率的な修行の場を求めるためのツールとして捉えられるべきでしょう。

天眼通は、あらゆるものを視る能力です。肉眼では見えないもの、例えば、微細な世界や遠方の景色、あるいは他人の心の奥底に潜む感情までも透視することができるとされます。これは単なる視覚の拡張ではなく、真実を見抜く慧眼を象徴しています。しかし、天眼通によって得られる情報は、必ずしも絶対的な真実とは限りません。見る者の解釈や、心の状態によって歪められる可能性も否定できません。

天耳通は、あらゆる音を聞く能力です。微小な音から遠く離れた場所の音、さらには人間の言葉を超えた宇宙の音まで、あらゆる音を聞き取ることができるとされます。これは、他者の心や世界の真実を間接的に理解するための手段として機能します。しかし、聞こえる情報全てが真実とは限らず、情報を選別し、正しく解釈する能力が重要になります。

他心通は、他者の心を理解する能力です。相手の思考、感情、欲望を直接的に読み取ることができるとされます。これは、他者とのコミュニケーションを円滑に進め、より深い理解を築くためのツールとなり得ますが、同時に、他者のプライバシーを侵害する可能性も秘めているため、その行使には慎重さが求められます。他者の心を完全に理解することは不可能であり、誤解が生じる可能性も常に存在します。

宿命通は、過去世や未来の出来事を知る能力です。輪廻転生の概念に基づき、自身の過去世の記憶だけでなく、未来に起こる出来事さえも予知することができるとされます。しかし、宿命通によって得られる情報は、あくまで可能性の一つであり、未来は必ずしも固定されたものではありません。宿命通は、自身の行いを振り返り、未来への道をより賢く選ぶための指針として役立つとされます。

五通は、仏教における修行の到達点の一つとして示されていますが、それらはあくまで修行の手段であり、目的ではありません。これらの能力に執着するのではなく、それらを仏道修行の助けとし、最終的には煩悩を離れ、悟りを開くことに重きを置くべきなのです。五通の有無に関わらず、慈悲と智慧を養い、衆生の苦しみを救うことが、真の仏道の目標と言えるでしょう。 これらの能力は、あくまでも修行の過程における副産物であり、それらに囚われることなく、悟りへの道を歩むことが大切です。