ASDの文章の特徴は?

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ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの作文には、出来事を羅列する傾向があり、具体的な内容や抽象的な表現が少ないことがあります。また、直感的なイメージで題材を捉え、物事の関係性を理解するのが苦手な場合があります。表現が型にはまりやすく、文章全体のまとまりに欠けることも特徴として挙げられます。

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ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの文章表現に見られる特徴と、その背景にある認知特性

ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの文章表現は、定型発達のお子さんと比較して、独特の特徴が見られることがあります。既述のように、出来事を羅列しがちで、具体的な記述に欠け、抽象的な表現が少ないといった点が挙げられますが、これは、ASDの特性に根ざした認知的な背景が影響していると考えられます。

まず、詳細へのこだわりが挙げられます。ASDのお子さんは、細部に注意を払う能力に長けている反面、全体像を捉えることが苦手な場合があります。そのため、文章を書く際に、個々の出来事を正確に記述しようとするあまり、それらがどのように関連しているか、どのような意味を持つのかといった視点が抜け落ちてしまい、結果的に羅列的な文章になることがあります。

次に、社会性の困難さが影響している可能性も考えられます。文章は、読み手がどのように受け取るかを想像しながら書く必要があります。しかし、ASDのお子さんは、他者の気持ちを推測したり、共感したりすることが苦手な場合があります。そのため、読み手が理解しやすいように、背景情報や感情的なニュアンスを加えたり、比喩表現を用いるといった配慮が不足し、客観的で無機質な文章になることがあります。

さらに、認知の柔軟性の欠如も影響を与えます。文章を書く際には、状況に応じて表現方法を変えたり、異なる視点から物事を捉えたりする必要があります。しかし、ASDのお子さんは、既存のパターンやルールに固執しやすく、柔軟な思考が苦手な場合があります。そのため、表現が型にはまりやすく、創造性や独自性に欠ける文章になることがあります。例えば、「今日は楽しかった」という文章を書く際に、具体的な何が楽しかったのか、どのような感情を抱いたのかを、状況に合わせて表現することが難しい場合があります。

これらの特徴は、ASDのお子さんの個性の一部であり、決して否定されるべきものではありません。しかし、文章を通じて円滑なコミュニケーションを図るためには、これらの特性を理解した上で、適切な支援を行うことが重要です。

具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。

  • 構造化された文章作成の指導: 文章の構成要素(導入、本論、結論)や、段落の役割などを明確に示し、テンプレートを活用することで、文章全体のまとまりを意識させる。
  • 具体的な記述の練習: 五感を活用した描写や、具体的な例を用いることで、文章にリアリティと説得力を持たせる。
  • 感情語彙の拡充: 感情を表す言葉や表現を学び、文章に感情的なニュアンスを加える練習をする。
  • 他者の視点の学習: ロールプレイングや物語を通じて、他者の気持ちを想像する練習をする。

重要なのは、ASDのお子さんの個性や特性を尊重しながら、文章表現のスキルを向上させるための支援を行うことです。それぞれの特性に合わせた個別化されたアプローチを通じて、文章を通じて自己表現する喜びを体験できるよう、支援していくことが大切です。