サンダーバードはなぜ敦賀止まりなのですか?

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サンダーバードが敦賀止まりなのは、敦賀以遠では新快速との速度差が縮まるためです。湖西線経由の新快速は近江舞子~敦賀間で各駅停車となり、所要時間が長くなるため、サンダーバードの優位性が薄れるのです。

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サンダーバードが敦賀止まりである理由を、単に「新快速との速度差が縮まるから」と一言で片付けるのは、やや乱暴です。その背景には、複雑に絡み合った複数の要因が存在します。敦賀以西への延伸を阻む壁は、技術的な問題、経済的な問題、そして運行戦略という、三つの大きな山脈にたとえることができるでしょう。

まず、技術的な問題です。サンダーバードは、北陸新幹線敦賀開業以前は、金沢、そして富山、さらには新潟へと向かう主要な特急列車でした。しかし、湖西線以西の路線、特に北陸本線は、線路の規格やカーブの半径、トンネルの寸法など、様々な面で高速運転に適した設計とは言い切れません。 サンダーバードが現在走行している北陸本線は、古くからある路線であり、新幹線のような高規格の路線と比較すると、速度向上の余地は限られています。急カーブや勾配の多い区間では、スピードを落とす必要があり、速度向上には大規模な線路改良が必要となります。その費用は莫大であり、費用対効果の観点から、現状維持が選ばれている可能性が高いです。

次に、経済的な問題です。敦賀以西への延伸には、前述の線路改良に加え、車両の改良、駅舎の改修、さらには人員配置の増加など、多額の費用がかかります。北陸新幹線が開業したことで、北陸地方へのアクセスは格段に向上しました。新幹線利用客の増加に伴い、特急列車であるサンダーバードの利用者は減少傾向にあります。この状況下で、新たな投資を行う経済的合理性を見出すのは容易ではありません。莫大な費用を投じて延伸しても、採算が取れるとは限らないのです。

最後に、運行戦略の問題です。新快速の運行は、沿線地域住民の利便性を高めることを目的としています。敦賀以西では、新快速の各駅停車化により、サンダーバードのスピード面での優位性が相対的に小さくなります。仮にサンダーバードを延伸させたとしても、新快速との競合が激化し、かえってサンダーバードの収益性を悪化させる可能性があります。JR西日本は、サンダーバードと新快速という二つの列車を、それぞれの特性を生かした形で運用することにより、沿線全体の交通需要を効率的にカバーしようとしていると考えられます。

つまり、サンダーバードが敦賀止まりである理由は、単なる「速度差」の問題ではなく、技術的制約、経済的合理性、そして緻密な運行戦略の総合的な判断の結果であると言えるでしょう。敦賀をターミナルとすることで、限られた資源を効果的に配分し、全体としての効率性を最大化しようという戦略が背景にあると考えられます。 将来、技術革新や社会情勢の変化によって、状況が変わる可能性はゼロではありませんが、現時点では敦賀がサンダーバードの終着駅であることは、様々な要因が複雑に絡み合った結果として理解すべきでしょう。