入国スタンプがない国はどこですか？

入国スタンプ不要？世界のパスポートコントロールの未来

世界中を旅する人にとって、パスポートに押される入国スタンプは、旅の思い出の一部であり、同時に、その国を訪れたという証拠でもあります。しかし、この慣習は、徐々に変わりつつあります。多くの国が、入国管理の効率化やデジタル化を進める中で、入国スタンプの廃止、あるいはその代替手段の導入を検討、もしくは既に実施しているのです。

2024年8月現在、入国スタンプを完全に廃止している国として、一般的に挙げられるのはアメリカ合衆国、アルバニア、カナダ、イギリス、シンガポールです。しかし、この「完全廃止」という言葉には、微妙なニュアンスが存在します。これらの国では、従来の紙ベースの入国スタンプは廃止されていますが、入国管理システムは依然として機能しています。 単に、その記録が紙媒体ではなく、デジタルデータとして管理されているという点が大きな違いと言えるでしょう。

例えば、アメリカ合衆国では、ESTA（Electronic System for Travel Authorization）プログラムを利用したビザ免除入国者においては、入国スタンプが押されることはありません。 ESTAの承認を得て入国した記録は、電子的に保存され、必要に応じてアクセス可能です。同様のシステムは、他の国々でも導入されています。カナダでは、eTA（Electronic Travel Authorization）システム、イギリスでは、オンラインでの入国申請システムなどが運用されており、これらのシステムを利用した入国では、従来のスタンプは不要となっています。

では、なぜこれらの国々は入国スタンプの廃止に踏み切ったのでしょうか？その理由はいくつか考えられます。

まず、効率性の向上が挙げられます。紙ベースのスタンプを押す作業には、どうしても時間がかかります。特に、多くの旅行者が同時に入国する空港などでは、この作業が大きなボトルネックになる可能性があります。デジタル化によって、入国審査の手続きを迅速化し、待ち時間を短縮することが期待できます。

次に、セキュリティの強化です。デジタルデータであれば、改ざんされにくく、正確な入国記録を管理することができます。また、データ分析によって、不正入国やテロリズムなどのリスクを早期に発見することも期待できます。

さらに、環境保護という観点も無視できません。紙とインクの使用を削減することで、環境への負荷を軽減できるというメリットがあります。これは、持続可能な社会を目指す国々にとって、無視できない要素と言えるでしょう。

しかし、入国スタンプの廃止は、すべての人にとって歓迎されるものではありません。観光客の中には、入国スタンプを旅の記念として大切にしている人も多くいます。また、一部の国では、パスポートにスタンプが押されていないことで、入国記録の証明が難しくなるという懸念も残ります。

今後、より多くの国がデジタル化による入国管理システムの導入を進める中で、入国スタンプの廃止はますます一般的になるでしょう。しかし、その過程では、効率性とセキュリティの向上だけでなく、個人のプライバシー保護や、スムーズな入国手続きの確保など、様々な課題を解決していく必要があります。 入国スタンプの未来は、技術革新と社会的な合意形成によって、今後大きく変化していくことでしょう。 そして、その変化は、私たち旅行者にとっても、大きな影響を与えることになるのです。