北陸新幹線の列車名はなぜ「つるぎ」なのですか？

北陸新幹線の列車名「つるぎ」に込められた想いと歴史

北陸新幹線を走る列車名の一つ「つるぎ」。その響きには、沿線の雄大な自然、過去の歴史、そして未来への希望が込められています。なぜ「つるぎ」という名前が選ばれたのか、その背景を探ることで、北陸新幹線に対する理解がより深まるでしょう。

「つるぎ」という名前の直接的な由来は、富山県にそびえる名峰・剱岳です。標高2,999メートルを誇る剱岳は、その険しい岩肌と鋭利な山容から「岩の殿堂」とも呼ばれ、古くから人々に畏敬の念を抱かせてきました。その威風堂々とした姿は、まさに「つるぎ」という名にふさわしい存在と言えるでしょう。

しかし、単に地元の名所から名前を取ったというだけではありません。「つるぎ」という名前は、かつて北陸本線を走っていた特急列車の愛称としても使われていました。昭和36年から平成6年まで運行された特急「つるぎ」は、大阪と金沢を結び、北陸地方と関西地方を繋ぐ重要な役割を果たしていました。この列車名は、長年地域の人々に愛され、北陸への旅の象徴として記憶されてきたのです。

北陸新幹線の列車名を決定する際、JR西日本では一般公募を行いました。集められた候補の中から「つるぎ」が選ばれたのは、剱岳という象徴的な名峰に由来することに加え、かつて親しまれた列車名を引き継ぐことで、地域への愛着と歴史を尊重するという意味合いがあったからです。新しい時代への幕開けを告げる新幹線に、過去の記憶を繋ぎ、未来への希望を託す。そんな願いが込められていると言えるでしょう。

当初、「つるぎ」は金沢～富山間の区間列車として運行を開始しました。これは、全線開通までの段階的な開業戦略の一環であり、地域間の移動を活性化させることを目的としていました。短距離の運行ながらも、新幹線の快適さを手軽に体験できる列車として、多くの利用者に親しまれました。

現在では、新幹線は延伸を重ね、より広範囲な地域を結ぶようになりましたが、「つるぎ」という名前は、北陸新幹線の歴史の一部として、そして北陸地方の象徴として、今後も人々に愛され続けることでしょう。