外国人はパスポートを携帯する義務がある？

日本滞在中の外国人：パスポート携帯義務の現実と注意点

日本を訪れる外国人観光客や、就労・留学などで長期滞在している外国人の皆様にとって、パスポートの携帯は非常に重要な問題です。 上記のように「法律で義務付けられている」と簡単に述べられていますが、その実態は法律条文に明記されているものではなく、むしろ複数の法令と運用に基づいた、いわば「事実上の義務」と言えるでしょう。 この曖昧な点を踏まえ、本稿ではパスポート携帯に関して、誤解を招きやすい点や注意すべき点を詳細に解説します。

まず、日本には「パスポートを常時携帯しなければならない」という、単独の法律が存在しません。 この義務は、主に「出入国管理及び難民認定法」や「旅券法」といった関連法令、そしてそれらに基づく警察の職務執行規則、さらには各地方自治体の条例などに散らばる規定の解釈と、長年の運用によって成立していると言えるでしょう。

具体的には、警察官が職務質問を行う際に、身分証明書の提示を求める権限を持っています。 外国人の場合は、パスポートまたは在留カードが最も有効な身分証明書となるため、提示を求められる可能性が高いのです。 提示を拒否した場合、警察官は個人の身元確認のため、さらなる調査を行う必要が生じます。 これは、時間的なロスだけでなく、場合によっては不審者として扱われ、不当な扱いを受ける可能性も否定できません。

さらに、パスポートの携帯は、緊急事態への対応にも不可欠です。 病気や怪我、事故など、予期せぬ事態に遭遇した場合、パスポートは身元の確認、連絡先、医療保険などの情報確認に必要不可欠な書類となります。 パスポートが手元にない場合、適切な医療措置を受けられない、家族に連絡が取れない、帰国の手続きに遅延が生じるなど、深刻な事態を招く可能性があることを認識しておくべきです。

しかし、「常時携帯」という表現には注意が必要です。 必ずしも肌身離さず持ち歩く必要はありませんが、容易にアクセスできる場所に保管しておくことが重要です。 例えば、ホテルのセーフティボックスに保管する場合は、コピーを携帯しておくなどの工夫が必要でしょう。 また、観光地でのスリや置き引きには十分注意し、常に周囲の状況を把握する必要があります。 バッグの中で紛失する、あるいは盗難に遭う可能性も考慮し、安全な携帯方法を工夫することが求められます。

結論として、日本滞在中の外国人は、パスポートまたは在留カードを「事実上」常時携帯する必要があると言えるでしょう。 これは法律条文に明示的に記されていなくても、警察の職務質問への対応、緊急事態への備え、そして円滑な生活を送る上で不可欠な行為です。 常に身につけるか、安全でアクセスしやすい場所に保管し、不測の事態に備えることが、安心して日本での生活を送るために必要不可欠な要素なのです。 パスポートの重要性を再認識し、適切な管理を徹底しましょう。 不明な点があれば、最寄りの警察署や出入国在留管理局に問い合わせることをお勧めします。