海外の道路標識に使われているフォントは？

世界を駆ける道路標識フォント：視認性を追求したデザインの舞台裏

私たちは日々、意識するしないに関わらず、道路標識から膨大な情報を読み取っています。安全な運転をサポートする上で、道路標識の視認性は非常に重要です。では、世界中の道路標識で使われているフォントには、どのような秘密が隠されているのでしょうか？

インターネット上ではDINフォントが広く使われていると紹介されていますが、実はそれだけではありません。国や地域によって、道路環境や文化的な背景を考慮し、異なるフォントが採用されているのです。

例えば、欧州ではDINフォントが主流ですが、アメリカではFederal Highway Administration (FHWA) が開発したHighway Gothicというフォントが広く使用されています。Highway Gothicは、高速道路での高速走行時に、ドライバーが瞬時に情報を認識できるよう、文字幅が広く、判読性に優れたデザインとなっています。

一方、日本においては、視覚デザイン研究所が開発した「公団ゴシック」が長らく使用されてきました。これは、日本語の文字の特性を考慮し、縦書き・横書きどちらにも対応できる、視認性の高いフォントです。近年では、ユニバーサルデザインの観点から、より現代的で読みやすい「ヒラギノ角ゴ」を採用する例も増えています。

このように、道路標識に使われるフォントは、単に「見やすい」だけでなく、様々な要素が考慮されて選ばれています。

• 視認距離: 高速道路のような高速走行環境では、より遠くからでも認識できる文字の形状が求められます。
• 照明条件: 夜間や悪天候時でも視認性を確保するため、反射材との組み合わせや文字の輪郭などが重要になります。
• 文化的背景: 各国の言語や文字の特性、さらには文化的な習慣もフォントの選択に影響を与えます。例えば、漢字文化圏では、漢字の複雑な形状を考慮したフォントが求められます。
• ユニバーサルデザイン: 高齢者や視覚障碍者など、多様な人々が情報を理解できるよう、コントラストや文字間隔などが工夫されています。

道路標識のフォントは、私たちが安全に移動するための重要な情報伝達手段です。それぞれのフォントが持つ特徴や設計思想を知ることで、何気なく目にしている道路標識が、より深く、興味深いものに見えてくるかもしれません。

次に道路標識を見かけた際には、少し立ち止まって、そのフォントに込められたデザインの意図を感じてみてください。それは、安全への配慮と、情報伝達の最適化を追求した、奥深い世界への入り口となるでしょう。