海外90日ルールとは？

海外90日ルール：日本のパスポートで世界を旅する際の落とし穴と抜け道

日本国籍を持つ人にとって、海外旅行は比較的容易です。多くの国で、観光目的であれば90日以内の滞在はビザなしで許可されています。これが俗に言う「海外90日ルール」です。しかし、この「90日」という数字の背後には、多くの誤解や複雑なルールが潜んでいます。単に「90日以内ならOK」と安易に考えてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるのです。本稿では、この「海外90日ルール」の真相を詳しく解説し、安全で快適な海外生活・旅行を送るための知恵を共有します。

まず、重要なのは「90日ルール」はあくまで原則であり、絶対的なものではないということです。90日以内の滞在であっても、ビザ免除の対象外となるケースが存在します。これは、滞在目的や渡航先の国によって大きく異なります。例えば、観光目的であれば多くの国で90日ビザ免除が適用されますが、就労目的や留学目的の場合は、たとえ滞在期間が90日以内であってもビザが必要となる場合がほとんどです。

具体的に、ビザ免除の適用が難しいケースを見てみましょう。例えば、語学学校に通う場合、たとえ短期コースであっても、滞在の目的が「学習」であるため、ビザが必要となる可能性が高いです。また、ボランティア活動やインターンシップなども、無償であっても就労行為とみなされる可能性があり、ビザ申請が必要となるケースがあります。さらに、滞在目的が曖昧であったり、出入国管理官に不審に思われるような行動をとったりした場合、ビザ免除が認められず、帰国を強制される可能性もゼロではありません。

また、90日ルールは、連続した90日間を指すものではありません。多くの国では、特定期間内（例えば180日以内）の滞在日数が90日以内であることが条件となります。つまり、例えば60日間滞在した後、日本に一時帰国し、その後再び30日間滞在するといった場合でも、合計90日以内であれば問題ないケースが多いのですが、国によっては、この期間を厳密に適用しないケースもあります。

さらに、国によってルールが異なることを忘れてはいけません。シェンゲン協定加盟国のように、複数の国をまとめて一つの滞在として扱う場合もあります。例えば、シェンゲン圏を旅行する際には、シェンゲン圏全体での滞在日数が90日以内である必要があります。一方、それぞれの国に個別に90日ルールが適用されるケースもあります。渡航前に必ず、外務省のホームページや当該国の領事館のウェブサイトで、最新のビザ情報を確認することが不可欠です。

最後に、90日ルールはあくまでも滞在許可に関するルールであり、税金や社会保険などの他の法律には影響しません。例えば、長期滞在に近い90日間の滞在であっても、日本での住民税や国民年金などの義務は変わりません。

「海外90日ルール」は、一見シンプルですが、その運用は複雑で、国や状況によって大きく異なるため、安易な判断は危険です。渡航前に十分な情報収集を行い、必要であれば専門機関に相談するなど、万全の態勢で海外旅行・滞在に臨むことが大切です。 自身の滞在目的を明確にし、該当する国のビザ要件を事前に確認することで、トラブルを回避し、安全で充実した海外生活を送ることができるでしょう。