特急こうのとりは全席指定ですか?

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2022年3月のダイヤ改正から、特急「こうのとり」は全車指定席に変更されます。これはJR西日本のネット予約サービス「e5489」の「チケットレスサービス」拡充に伴う措置です。
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特急「こうのとり」の全席指定化:利便性向上と課題

2022年3月のダイヤ改正を機に、北近畿地区を走る特急「こうのとり」は全席指定席となりました。この変更は、JR西日本が力を入れる「e5489」のチケットレスサービス拡充の一環として実施されました。一見すると、利用者にとって便利なように見えるこの措置ですが、その背景には複雑な事情と、利用者にとってのメリット・デメリットが共存していると言えるでしょう。

まず、全席指定化のメリットとして最も大きいのは、確実に座席を確保できるという点です。以前は自由席が存在したため、特に休日や行楽シーズンには座席確保に苦労する場面も少なくありませんでした。特に、福知山線や山陰本線といった沿線地域では、観光客や通勤・通学客の利用も多いため、混雑は避けられない状況でした。全席指定化によって、この混雑緩和と、利用者にとっての安心感の向上に繋がると期待されています。

さらに、JR西日本はチケットレスサービスの拡充を背景に、この変更を推進しました。チケットレスサービスは、スマートフォンやパソコンで簡単にチケットを購入・管理できるシステムです。紙のチケットが不要になることで、発券にかかるコスト削減や、環境への配慮という点でもメリットがあります。全席指定化によって、チケットレスサービスの利便性がより一層高まり、利用促進に繋がるという狙いがあると考えられます。

しかし、全席指定化にはデメリットも存在します。最も大きな懸念事項は、料金の増加です。自由席に比べて指定席は料金が高いため、利用者の負担増につながる可能性があります。特に、学生や低所得者層にとっては、利用頻度の減少を招く可能性も否定できません。また、急な予定変更や、乗車券購入を忘れてしまった場合、乗車自体が困難になるというリスクも生じます。駅での当日券購入も可能ではありますが、空席状況によっては乗車できない可能性も考慮しなければなりません。

さらに、全席指定化は、利用状況の把握をより正確にすることを可能にします。JR西日本は、このデータに基づいて運行状況の改善や、車両数の調整といった施策を行うことが期待できます。しかし、データの活用方法によっては、利用者のプライバシーに関する懸念も生じる可能性も否定できません。透明性のあるデータ管理と、適切な情報公開が求められるでしょう。

結論として、特急「こうのとり」の全席指定化は、チケットレスサービスの普及促進と、利用者にとっての座席確保の安心感向上というメリットをもたらす一方、料金増加や、急な予定変更への対応といったデメリットも存在します。JR西日本は、これらのデメリットを補うための施策、例えば、早割制度の充実や、チケットレスサービスの更なる利便性向上などを積極的に推進することで、利用者にとって真にメリットのあるシステム構築を目指していく必要があると言えるでしょう。単なる利便性向上だけでなく、地域社会全体のニーズを捉えた、持続可能な交通システムの構築が重要であると認識すべきです。