観光の定義とは?

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日本の観光政策審議会は1995年、観光を「日常生活圏を離れ、余暇時間で行う触れ合い、学び、遊びを目的とする活動」と定義しました。これは、観光が単なる旅行ではなく、日常生活とは異なる体験を通して、新しい知識や文化に触れる機会を提供することを示しています。

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観光の定義とは?一見シンプルに見えるこの問いは、実は多角的な視点から考察する必要がある複雑な問題です。日本の観光政策審議会による1995年の定義、「日常生活圏を離れ、余暇時間で行う触れ合い、学び、遊びを目的とする活動」は、広く受け入れられていますが、現代社会における観光の多様性を完全に捉えているとは言い切れません。この定義を基盤としながら、現代の観光像をより深く探求してみましょう。

まず、この定義における「日常生活圏を離れる」という点に着目します。これは物理的な移動を意味するだけでなく、日常のルーティンや慣習からの脱却も包含していると考えられます。例えば、近隣の温泉地への日帰り旅行も、日常生活の緊張感から解放され、異なる環境に触れるという意味で、観光と言えるでしょう。逆に、海外旅行であっても、単なるビジネス出張や単身赴任であれば、観光とはみなされない可能性があります。重要なのは、旅行の目的が「余暇時間」における「触れ合い、学び、遊び」にあるかどうかです。

「余暇時間」という要素は、観光の自由度の高さを示しています。義務や責任から解放され、自分の意思で時間と場所を選択できる点が、観光を魅力的なものたらしめています。しかし、近年では、ワーケーションやスタディーツアーなど、余暇時間と仕事や学習を組み合わせた観光形態も増加しています。これらの形態は、従来の定義からは逸脱するように見えるかもしれませんが、主体的な時間の使い方であり、新しい知識や経験を得ることを目的とする点において、観光の精神に合致すると言えるでしょう。

「触れ合い、学び、遊び」は、観光の目的を三つの側面から捉えています。自然との触れ合い、異文化との交流、歴史的建造物や文化遺産の学習、そして、エンターテインメントとしての遊びなど、多様な活動が含まれます。近年注目されているエコツーリズムやサステイナブルツーリズムは、自然環境との触れ合いを重視し、環境保全への意識を高めることを目的としています。一方、文化観光は、地域独特の文化や伝統に触れることで、異文化理解を深めることを目指します。これらの多様な観光形態は、いずれも「触れ合い、学び、遊び」という目的を満たしており、観光の定義を豊かにしています。

しかし、この定義には限界もあります。例えば、ボランティアツーリズムや医療ツーリズムなどは、この定義に完全に当てはまるとは言えません。ボランティアツーリズムは、余暇時間を利用して社会貢献活動を行うものであり、必ずしも「遊び」を目的としていません。医療ツーリズムは、健康目的の旅行であり、余暇を楽しむことが主目的ではない場合もあります。これらの新しい観光形態の台頭を踏まえると、観光の定義は、より包括的で柔軟なものへと進化していく必要があると言えるでしょう。

結論として、日本の観光政策審議会の定義は、観光の本質を的確に捉えているものの、現代の多様な観光形態を全て包含するには不十分です。今後、観光の定義を再考し、持続可能な観光の発展に繋げるためには、単なる場所への移動ではなく、目的意識を持った主体的な行動、そして、個人の成長や社会貢献にも繋がる広義の「観光」という概念を理解することが重要となるでしょう。 観光の定義は、常に社会の変化を反映しながら、進化し続ける必要があるのです。