韓国のトイレでトイレットペーパーが流せないのはなぜですか?

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韓国の一部トイレでは、下水管の細さや老朽化、排水処理システムの都合上、トイレットペーパーの詰まりを防ぐため、便器に流すことができません。そのため、使用済みトイレットペーパーは、各トイレに設置されているゴミ箱に捨てる必要があります。これは韓国特有の衛生習慣ではなく、下水管の構造による物理的な制約です。

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韓国のトイレにおけるトイレットペーパーの廃棄方法に関する独特の習慣は、多くの外国人観光客にとって戸惑いの種となるでしょう。なぜ韓国の一部、特に古い建物や地方部では、トイレットペーパーを便器に流してはいけないのでしょうか?その背景には、日本の高度経済成長期とは異なる歴史的経緯と、それに伴う下水道インフラの現状が深く関わっています。

単純に「古いから」と片付けるには、韓国の下水道事情は複雑です。韓国の急速な経済発展は、インフラ整備にも大きな影響を与えました。高度経済成長期に、欧米のような大規模な下水処理システムの整備が優先されなかった歴史的な理由があります。急速な都市化と人口増加に対応するため、まず生活用水や工業用水の供給網の整備が急務とされ、下水道整備は相対的に遅れてしまいました。その結果、多くの地域では、細く、老朽化した下水管が張り巡らされているのが現状です。

これらの下水管は、日本の高度経済成長期に整備されたものとは異なり、トイレットペーパーの大量流入に耐えられるように設計されていません。日本の下水道システムは、比較的早期からトイレットペーパーの流下に対応できるよう設計・建設されてきましたが、韓国ではそうではありませんでした。そのため、多くの便器には、トイレットペーパーを流すと詰まってしまうリスクが付きまといます。下水管の詰まりは、深刻な水害や衛生問題を引き起こすため、個々の建物や地域によって、トイレットペーパーの廃棄方法が厳格に定められているのです。

また、下水処理システムの問題も無視できません。韓国の多くの地域、特に地方部では、下水処理施設の整備が遅れているか、能力が不足しています。トイレットペーパーが大量に流入すると、下水処理施設に大きな負担がかかり、処理能力を超えてしまう可能性があります。処理しきれない汚泥は、環境汚染にもつながるため、トイレットペーパーの流下に制限をかけることは、環境保護の観点からも重要な措置となっています。

さらに、韓国では、洋式トイレの普及が比較的遅かったという歴史的背景も影響しています。かつては、多くの家庭や公共施設で和式トイレが主流でした。和式トイレでは、そもそもトイレットペーパーを流す習慣がありませんでした。そのため、洋式トイレの普及後も、長年の習慣や下水道インフラの制約から、トイレットペーパーの流下を禁止する文化が定着してしまった側面もあります。

近年では、新築マンションや近代的な施設では、問題なくトイレットペーパーを流せるようになっています。しかし、古い建物や地方部では、依然としてゴミ箱に捨てる必要があるケースが多く見られます。この習慣は、単なる「不便さ」ではなく、歴史的背景、経済的制約、環境保護といった複合的な要因が絡み合っている複雑な問題なのです。訪韓の際には、トイレの標識をよく確認し、適切な方法でトイレットペーパーを廃棄することが、マナーとして求められます。そして、その背景にある韓国の下水道事情について、理解を深めておくことも重要でしょう。