会社の財産を私的に利用したらどうなるのか？

会社の財産を私的に利用した場合、一体何が起こるのか？～リスクと法的責任、そして企業が取るべき対策

会社の備品を個人的に使ったり、会社の資源を自分のために流用したり…仕事をしていると、ふと魔が差す瞬間があるかもしれません。しかし、会社の財産を私的に利用することは、単なる倫理的な問題に留まらず、深刻な法的責任を伴う行為です。この記事では、会社の財産を私的に利用した場合に起こりうるリスク、法的責任、そして企業が取るべき対策について、詳しく解説します。

罪に問われる可能性：背任罪というリスク

冒頭にあるように、会社の財産を私的に利用した場合、刑法上の背任罪に問われる可能性があります。背任罪は、会社（または他人）のためにその事務を処理する者が、その任務に背き、自己または第三者の利益を図り、会社に財産上の損害を加える行為を処罰するものです。

ここで重要なのは、「会社の利益に反する行為」であったかどうかです。例えば、会社の備品をほんの少しだけ私的に使用した場合でも、それが会社の業務に支障をきたしたり、会社の信用を傷つけたりするような場合は、背任罪に該当する可能性があります。

背任罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。しかし、私的利用の規模や悪質性によっては、懲役刑が科される可能性も十分にあります。

背任罪以外にも？民事上の責任と懲戒処分の可能性

法的責任は、刑事上の責任だけではありません。会社は、私的利用によって受けた損害を賠償するよう、民事上の損害賠償請求を行うことができます。損害賠償請求では、私的利用によって会社が被った直接的な損害だけでなく、間接的な損害（例えば、信用の低下による顧客の減少など）も賠償の対象となることがあります。

さらに、就業規則に違反したとして、会社から懲戒処分を受ける可能性もあります。懲戒処分の内容は、私的利用の程度や会社の就業規則によって異なりますが、減給、降格、最悪の場合は懲戒解雇といった厳しい処分が下されることもあります。

具体例から考えるリスク

例えば、以下のようなケースが考えられます。

• 会社のパソコンを私用で使う： 個人的な趣味のサイトを閲覧したり、副業の業務を行ったりすることは、ウイルス感染のリスクを高め、会社の情報セキュリティを脅かす可能性があります。また、業務時間中に私的な作業を行うことは、職務専念義務に違反する行為とみなされることがあります。
• 会社の備品を持ち帰る： 文房具やコピー用紙など、消耗品を持ち帰る行為は、窃盗罪に該当する可能性があります。たとえ少額であっても、繰り返される場合は、会社からの信頼を大きく損なうことになります。
• 会社の車を私用で使う： 通勤以外の目的で会社の車を無断で使用することは、会社の車両保険の適用範囲外となり、万が一事故を起こした場合、会社に大きな損害を与える可能性があります。
• 会社の顧客情報を持ち出す： 競合他社に顧客情報を漏洩したり、転職後に自分の営業活動に使用したりすることは、不正競争防止法に違反する可能性があります。

企業が取るべき対策：透明性と倫理観の醸成

このようなリスクを回避するためには、企業側も明確な対策を講じる必要があります。

• 就業規則の明確化： 会社の財産の私的利用に関するルールを明確に定め、従業員に周知徹底することが重要です。どのような行為が禁止されているのか、違反した場合の懲戒処分の内容などを具体的に明記することで、従業員の意識を高めることができます。
• 内部統制の強化： 備品の管理体制を強化したり、経費精算のルールを厳格化したりすることで、不正行為を防止することができます。
• 研修の実施： コンプライアンスに関する研修を定期的に実施し、従業員の倫理観を高めることが重要です。事例を紹介しながら、私的利用のリスクや法的責任について理解を深めることで、不正行為の抑止効果が期待できます。
• 相談窓口の設置： 従業員が安心して相談できる窓口を設置することで、不正行為の早期発見につながることがあります。匿名での相談も受け付けるなど、従業員が気軽に相談できる環境を整備することが重要です。

まとめ

会社の財産を私的に利用することは、背任罪に問われる可能性だけでなく、民事上の損害賠償請求や懲戒処分といった様々なリスクを伴います。企業は、就業規則の明確化や内部統制の強化、研修の実施など、多角的な対策を講じることで、従業員の不正行為を防止し、会社の財産を守る必要があります。そして、従業員一人ひとりが高い倫理観を持ち、会社の財産を大切に扱う意識を持つことが、最も重要なことと言えるでしょう。