免許証のコピーは個人情報保護法違反ですか？

免許証のコピー取得と個人情報保護法：グレーゾーンとリスク管理

会員カード作成時などに運転免許証のコピーを求められるケースは少なくありません。しかし、この行為が個人情報保護法に違反する可能性があることは、多くの国民にとって認識が曖昧なままです。単なる「コピー」という行為が、なぜ法的リスクを孕むのでしょうか？ 本稿では、この問題について、より詳細に、そして実践的な観点から考察します。

まず、個人情報保護法（個人情報の保護に関する法律）は、個人情報の取得、利用、提供について、原則として「本人の同意」を必要としています。免許証のコピーには、氏名、住所、生年月日、顔写真、運転免許証番号といった、多くの個人情報が含まれています。会員カード作成という目的のために、これらの全てが必要なのでしょうか？ 多くの場合、氏名と住所だけで十分であり、免許証番号や顔写真は、全く必要のない情報です。

問題となるのは、「目的外利用」の観点です。会員カード作成という明確な目的があるにもかかわらず、免許証に含まれる不要な個人情報を取得することは、目的外利用に該当する可能性が高いと言えます。 例えば、取得した免許証のコピーが、会員カード作成以外の目的（例えば、ダイレクトメールの送付、マーケティング分析など）に利用される可能性があれば、それは明確な目的外利用となり、法令違反となるリスクが顕著に高まります。

さらに、情報漏洩のリスクも考慮しなければなりません。コピーされた免許証は、適切に管理・保管されなければ、不正アクセスや紛失によって、個人情報が漏洩する危険性があります。仮に漏洩した場合、なりすましや不正利用といった深刻な被害につながる可能性があり、事業者には重大な責任が問われます。

では、どのようにすれば法令遵守を確保できるのでしょうか？ 最も安全な方法は、免許証の提示のみを求め、コピーは取得しないことです。氏名や住所は、本人確認書類の提示を確認した上で、会員申込書に直接記入してもらう方法が有効です。どうしてもコピーが必要な場合は、取得する情報に限定する必要があります。例えば、氏名と住所のみを記載したコピーを、本人立ち会いの元で作成し、その場で利用後、直ちに廃棄するといった厳格な手順を設けるべきです。

また、事業者側には、個人情報保護に関する社内規定を整備し、従業員への教育を徹底することが重要です。個人情報の取扱いに関するルールを明確化し、目的外利用や情報漏洩を防ぐための具体的な対策を講じる必要があります。 さらに、外部委託を行う場合は、委託先に対しても適切な個人情報保護措置を講じさせる必要があります。

結論として、免許証のコピー取得は、個人情報保護法違反のリスクを孕むグレーゾーンと言えるでしょう。事業者には、法令遵守を徹底し、リスク管理を強化することが強く求められます。 個人情報の最小限の取得、安全な管理・保管、目的外利用の防止など、個人情報保護に関する意識を高め、適切な手続きを確立することで、法的リスクを軽減し、顧客からの信頼を確保することが重要です。 免許証のコピー取得は、安易に実施するべきではないことを改めて認識する必要があります。