喫煙室の設置は義務ですか?

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2019年7月以降、学校、病院、行政機関、児童福祉施設は原則敷地内禁煙です。ただし、屋外喫煙所の設置は可能です。それ以外の施設では、2020年4月以降、健康増進法の基準を満たした喫煙専用室以外の場所は原則禁煙となります。

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喫煙室の設置は義務? 複雑化する受動喫煙対策と事業者の責任

2019年7月の健康増進法改正以降、受動喫煙対策は大きく前進しました。学校、病院、行政機関、児童福祉施設は敷地内禁煙が原則となり、多くの事業者も対応に追われています。しかし、「喫煙室の設置は義務なのか?」という問いに対する答えは、単純な「はい」でも「いいえ」でもありません。法令の解釈と現実の運用には、複雑な要素が絡み合っているからです。

先に述べた通り、2019年7月以降、学校、病院、行政機関、児童福祉施設は原則敷地内禁煙となりました。これは、これらの施設において、受動喫煙による健康被害を防ぐことが特に重要であると判断されたためです。しかし、完全に敷地内禁煙にすることが困難な場合、屋外に喫煙所を設置することは認められています。重要なのは、「原則禁煙」であり、例外として喫煙所設置が認められているということです。設置にあたっては、周囲への配慮、適切な換気設備の設置など、一定の基準を満たす必要があります。

問題は、それ以外の施設です。2020年4月以降、それ以外の施設では「健康増進法の基準を満たした喫煙専用室以外の場所は原則禁煙」となりました。この「健康増進法の基準を満たした喫煙専用室」が、多くの事業者の混乱を招いています。 この基準は、換気設備の能力、室内の空気清浄度、喫煙室の構造など、非常に詳細で厳格な基準を定めています。 簡単に言えば、単なる「屋根のある場所」や「仕切られた空間」では不十分であり、相当な投資と維持管理を必要とする高性能な喫煙室を整備する必要があるということです。

ここで重要なのは、「義務」ではなく「原則」であるということです。 法令は喫煙室の設置を義務付けているわけではありません。しかし、従業員や利用客が喫煙する場所を全く提供しないということは、現実的に難しい場合も多いでしょう。 そのため、多くの事業者は、法令遵守のため、かつ従業員や顧客のニーズに対応するため、高性能な喫煙室の設置を「選択」しているのが現状です。

しかし、この選択には多大なコストがかかります。喫煙室の設置、維持管理には、初期投資だけでなく、定期的なメンテナンス費用、換気設備のランニングコストなどが発生します。中小企業にとっては、この負担が経営を圧迫する可能性も無視できません。

さらに、喫煙室の設置によって完全に受動喫煙を防止できるわけでもありません。完璧な換気システムであっても、わずかな煙の漏れは避けられない可能性があり、近隣住民からの苦情も懸念されます。

結果として、喫煙室の設置問題は、法令遵守、従業員や顧客への配慮、経済的負担、近隣住民との関係など、様々な要素を考慮した上で、事業者個々が判断しなければならない複雑な課題となっています。 単純に「義務」かどうかで判断するのではなく、それぞれの施設の状況、規模、そして地域社会との調和を考慮した、包括的な対策が求められているのです。 今後、喫煙室に関する更なるガイドラインや支援策が整備されることが期待されます。 そして、事業者自身も、法令を遵守しつつ、より健康的な職場環境、そして地域社会の実現に向けて、積極的に取り組んでいく必要があります。