妨害運転罪は厳罰化されましたか？

あおり運転、厳罰化で本当に安全になった？改正道路交通法施行後の実態と課題

2020年6月30日、改正道路交通法が施行され、あおり運転を含む妨害運転が厳罰化されました。懲役3年以下または50万円以下の罰金、著しい危険を生じさせた場合は懲役5年以下または100万円以下の罰金、さらに免許取消し処分という重い罰則が設けられました。この厳罰化は、社会問題となっていた危険なあおり運転を撲滅するための大きな一歩として期待されました。施行から数年経ち、果たして道路は安全になったのでしょうか？

確かに、厳罰化によってあおり運転に対する抑止力は高まったと言えます。警察庁の統計によれば、あおり運転の摘発件数は厳罰化以降減少傾向にあります。これは、ドライバーの意識変化や、ドライブレコーダーの普及による証拠確保の容易化も影響していると考えられます。しかし、依然としてあおり運転はなくならず、悲惨な事故も発生しています。厳罰化だけでは解決できない課題が浮き彫りになっているのです。

まず、あおり運転の定義の曖昧さが問題です。法律では「通行区分違反」「急ブレーキ禁止違反」「車間距離保持義務違反」など10種類の行為が規定されていますが、これらはあくまで例示であり、全てのあおり運転を網羅しているわけではありません。微妙なケースでは警察官の判断に委ねられる部分も多く、摘発に繋がらないケースも存在します。

次に、立証の難しさも課題です。あおり運転は瞬間的な出来事であり、客観的な証拠がないと立証が困難です。ドライブレコーダーの普及は貢献していますが、映像が不鮮明であったり、音声のみでは状況を正確に把握できない場合もあります。また、被害者が恐怖を感じて冷静な対応ができない状況では、証拠の確保が難しいことも考えられます。

さらに、ドライバーの意識改革も不可欠です。厳罰化によってあおり運転が犯罪であるという認識は広まりましたが、依然として「自分は大丈夫」という過信や、「少しの苛立ちでつい…」という安易な気持ちからあおり運転をしてしまうドライバーが存在します。交通ルールを遵守し、他者を思いやる運転マナーの徹底が重要です。

また、道路環境の整備も課題と言えるでしょう。例えば、片側一車線の道路では追い越しが難しく、前の車の速度が遅い場合にイライラが募りやすい状況が生まれます。追い越し車線の設置や道路の拡幅など、道路環境の改善もあおり運転の抑制に繋がる可能性があります。

今後、あおり運転を根絶するためには、厳罰化に加えて、以下の対策が必要だと考えられます。

• あおり運転の定義をより明確化し、警察官の判断基準を統一する。
• ドライブレコーダーの設置を義務化、または補助制度を充実させることで普及を促進する。
• 運転免許更新時などに、あおり運転の危険性に関する教育を強化する。
• 道路環境の整備を進め、ドライバーのストレスを軽減する。
• AI技術を活用したあおり運転の自動検知システムの開発を進める。

あおり運転は、加害者だけでなく被害者の人生をも大きく狂わせる凶悪な行為です。真に安全な道路環境を実現するためには、法整備だけでなく、社会全体で取り組む必要があります。一人ひとりが責任あるドライバーとして行動し、あおり運転を撲滅するための努力を継続していくことが重要です。