コストコの日本で1号店はどこですか？

コストコ旋風、日本上陸から四半世紀：久山町から始まった巨大倉庫店の軌跡

1999年、静かに、しかし確実に、日本の流通業界に革命を起こす種が蒔かれた。舞台は福岡県糟屋郡久山町。アメリカの会員制倉庫型卸売小売店、コストコホールセールが日本1号店をオープンさせたのだ。それから四半世紀近く、コストコは日本全国にその巨大な倉庫を展開し、今や北米以外で最大の市場へと成長を遂げている。

久山町、自然豊かなこの場所に、なぜコストコは最初の拠点を築いたのだろうか？当時、郊外型大型店舗は珍しく、ましてや会員制で年会費を支払うというスタイルは、多くの日本人にとって未知の体験だった。しかし、コストコは、高品質な商品を大量に仕入れ、低価格で提供するという独自のビジネスモデルで、消費者の心を掴んだ。週末になると、駐車場は県外ナンバーの車で溢れかえり、カートいっぱいに商品を詰め込む人々の姿は、まさに新しい消費文化の到来を象徴していた。

久山倉庫店は、単なる商品販売の場にとどまらなかった。広大な敷地に並ぶ、アメリカンサイズの商品、試食コーナーでの豊富なサンプル、そして活気あふれる店内。これらは、訪れる人々にエンターテイメント性をもたらし、まるでテーマパークのような体験を提供した。コストコは、単なる買い物ではなく、一種のレジャーとして定着していったのだ。

当初は、会員制という形態や、大量の商品に戸惑う声も少なくなかった。しかし、コストコは日本の消費者のニーズに合わせて、徐々に変化を遂げていった。例えば、生鮮食品の充実や、小分け販売の導入など、日本の家庭事情に合わせた商品展開を積極的に行ってきた。また、クレジットカードの利用を拡大したり、会員サービスを充実させるなど、利便性向上にも力を入れてきた。

久山倉庫店の成功は、他の地域への出店を加速させた。関東、関西、そして北海道へと、コストコの青い倉庫は全国に広がり、今では36店舗を数えるまでに成長している。それぞれの地域特性に合わせた品揃えや、地域貢献活動にも積極的に取り組み、地域に根差した店舗作りを心掛けている。

しかし、コストコの成功は、単なる店舗数の拡大だけではない。会員制という独自のシステムによって、顧客との強い絆を築き上げてきたことが、大きな要因と言えるだろう。年会費を支払うことで、顧客はコストコへの帰属意識を高め、リピーターへと繋がる。そして、その口コミが新たな顧客を呼び込み、さらなる成長へと繋がっていく。

久山町から始まったコストコの物語は、今もなお続いている。変化の激しい小売業界において、コストコはどのように進化を続け、日本の消費者に新しい価値を提供していくのだろうか。四半世紀を経てなお、その動向から目が離せない。これからのコストコは、単なる倉庫型店舗を超えて、地域社会の中心的な存在へと成長していく可能性を秘めている。そして、その原点である久山倉庫店は、日本のコストコの歴史を静かに見守り続けているのだ。