和室の上座はどこですか？

知っておきたい和室のマナー：上座の位置と心遣い

和室。そこは、畳の香りが心地よく、襖を開ければ広がる静謐な空間。現代の生活では、和室を持つ家は減ってきましたが、旅館や料亭、あるいは実家など、ふとした機会に和室に足を踏み入れることも少なくありません。そんな時、スマートに振る舞いたいもの。今回は、和室における上座の位置と、そこに込められた心遣りについて深掘りしてみましょう。

一般的に、「上座」とは、その場において最も敬意を払うべき人が座る席のこと。会議室やレストランなど、場所によって上座の位置は異なりますが、和室の場合は特に決まりごとが多く、少し複雑に感じるかもしれません。

まず基本となるのは、床の間の有無です。

床の間がある場合：

床の間は、掛け軸や生け花などを飾り、客をもてなすための特別な空間。そのため、床の間を正面に見た時、最も遠い位置、つまり床の間を背にする場所が上座となります。これは、床の間の美しい意匠を一番良く見ることができる席を、最も大切な人に譲るという考え方に基づいています。

床の間がない場合：

床の間がない場合は、入り口から最も奥まった場所が上座となるのが一般的です。これは、入り口から遠いほど、外の騒音や人の出入りが少なく、落ち着いて過ごせる空間であると考えられるためです。また、奥まった場所は、部屋全体を見渡せる位置にあるため、主賓をもてなすのにふさわしいとされています。

しかし、上座の位置は、部屋の構造や状況によって変化することもあります。例えば、庭に面した窓がある場合、庭の景色を一番良く見ることができる席が上座となることもあります。また、高齢の方や足の不自由な方がいる場合は、出入りがしやすい入り口に近い席を上座とするなど、臨機応変な対応が求められます。

さらに、上座の位置だけでなく、和室における立ち居振る舞いにも注意が必要です。畳の縁は踏まない、敷居は跨ぐといった基本的なマナーは、相手への敬意を示すだけでなく、和室という空間を大切にする心を表します。

上座を勧める際には、「こちらへどうぞ」と声をかけるだけでなく、「眺めの良い席ですが、いかがでしょうか」とか「静かな場所で、ゆっくりとおくつろぎください」など、相手への配慮を言葉で伝えることが大切です。

和室における上座の位置を知ることは、単なる知識ではなく、相手を思いやる心、そして日本の伝統文化を理解する第一歩と言えるでしょう。和室の空間を尊重し、相手への敬意を忘れずに、心地よい時間を過ごせるよう心がけたいものです。