「ございますでしょうか」は正しい敬語表現ですか？

「ございますでしょうか」は本当に間違い？適切な敬語表現を考える

「ございますでしょうか」という表現、ビジネスシーンなどで耳にすることも多いのではないでしょうか。一見丁寧な響きですが、実は「二重敬語」として誤用とされるケースがあります。本当にそうなのでしょうか？今回は「ございますでしょうか」の是非と、より自然で適切な敬語表現について考えてみましょう。

確かに、「ございます」は「ある」の丁寧語であり、既に敬意が含まれています。そこにさらに疑問の「でしょうか」を付け加えるのは、敬意が過剰になり、かえって不自然に聞こえる可能性があります。「二重敬語」と言われる所以です。特に、社内や親しい取引先に対しては、過剰な敬語はかえって距離感を感じさせてしまう場合もあります。

では、「ございますでしょうか」は常に間違いなのでしょうか？必ずしもそうとは言えません。例えば、非常に格式高い場面や、相手との力関係が大きく異なる場合、深い敬意を表すためにあえて「ございますでしょうか」を用いるケースも考えられます。例えば、寺院の僧侶に対して何かを尋ねる際や、目上のお客様に対して極めて慎重な対応が必要な場合などは、この表現が適切と言えるでしょう。

重要なのは、相手や状況に合わせて適切な表現を選ぶことです。一般的には、「ございますか」もしくは「ありますか」で十分な敬意を表現できます。「ございますか」は、「ある」の丁寧語である「ございます」に疑問の助詞「か」を付けたシンプルな表現で、多くの場面で適切に使用できます。一方、「ありますか」はよりくだけた表現ですが、社内や親しい間柄であれば問題なく使用できます。

さらに、より自然で丁寧な表現を目指すなら、「ございますでしょうか」のような直接的な疑問形ではなく、間接的な表現を用いるのも効果的です。例えば、

• 「～はございますか」の代わりに「～はご用意がございますか」
• 「資料はございますでしょうか」の代わりに「資料をご用意いただけますでしょうか」
• 「お時間ございますでしょうか」の代わりに「お時間よろしいでしょうか」もしくは「お時間いただいてもよろしいでしょうか」

といった表現は、相手に負担をかけることなく、より丁寧な印象を与えます。また、「～でしょうか」を避け、「～か」で終わる疑問形も、簡潔で自然な印象を与えます。例えば、「何かご質問はございますか」の代わりに「何かご質問はございますか」とするだけでも、印象が変わります。

敬語は、相手への配慮を示すための大切なコミュニケーションツールです。しかし、ただ闇雲に丁寧な言葉を使えば良いというものではありません。TPOに合わせて適切な表現を選ぶことが、真の敬意を示すことに繋がります。「ございますでしょうか」は、使い方によっては効果的な敬語表現となりえますが、多くの場合はよりシンプルな表現で十分です。状況を的確に判断し、最も適切な言葉を選び、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。過剰な敬語よりも、丁寧な言葉遣いと誠実な態度こそが、相手に真の敬意を伝える鍵となるのです。

さらに、尊敬語と謙譲語の使い分けにも注意が必要です。例えば、「ご覧いただけますでしょうか」は、相手に見てもらうという意味で尊敬語を使っていますが、「拝見できますでしょうか」は自分が相手のものを見させていただくという意味で謙譲語を使っています。状況に応じて適切な語を使い分けることで、より丁寧で正確な表現になります。