日本の病院グループで一番大きいのは？

地方から医療格差をなくす挑戦：徳洲会グループの軌跡と未来

日本の医療風景を語る上で、徳洲会グループの存在は無視できません。71の病院と3万人の従業員を抱えるこの巨大グループは、国内最大規模を誇り、離島や過疎地を含め全国各地で医療を提供しています。「生命だけは平等だ」という理念のもと、創設者である徳田虎雄氏の強い意志によって築き上げられた徳洲会は、日本の医療にどのような影響を与えてきたのでしょうか。そして、創設者の不在という大きな転換期を迎えた今、どのような未来を描いているのでしょうか。

徳田虎雄氏は、鹿児島県の奄美大島出身の医師です。医師不足が深刻な地方医療の現状を目の当たりにし、「生命だけは平等だ」という信念のもと、1973年に徳洲会病院を開設しました。当時としては革新的な24時間365日体制、救急医療への積極的な取り組み、そして「断らない医療」を掲げたことで、多くの患者から支持を集めました。特に、離島やへき地医療への貢献は大きく、医療過疎地域における最後の砦として機能しています。

徳洲会グループの急速な拡大を支えたのは、徳田氏の類まれなる経営手腕と、強いリーダーシップでした。彼は、いち早く医療法人化や株式公開を実現し、積極的なM&A戦略を展開することで、グループを巨大化させました。同時に、医療機器の共同購入や独自の研修システムの構築など、組織運営の効率化にも尽力しました。

しかし、その成長の過程は決して平坦ではありませんでした。政治献金問題や脱税疑惑など、様々なスキャンダルに巻き込まれ、批判の的となることも少なくありませんでした。また、中央集権的な組織運営や、現場の医師への負担の大きさも問題視されてきました。

そして2004年、徳田氏はALS（筋萎縮性側索硬化症）を発症。病魔と闘いながら、グループの運営に携わってきましたが、現在では療養生活を送っています。創設者の不在は、徳洲会グループにとって大きな転換期となりました。

創設者不在後の徳洲会は、組織運営の透明化とガバナンスの強化に取り組んでいます。外部有識者による委員会の設置や、コンプライアンス体制の整備など、過去の反省を踏まえた改革を進めています。また、地域医療への貢献という理念は変わらず、医師不足が深刻化する地方での医療提供体制の維持・拡充に尽力しています。

高齢化の進展や医療費の増大など、日本の医療は様々な課題に直面しています。その中で、徳洲会グループは、巨大な組織としての強みを生かし、地域包括ケアシステムの構築や、ICTを活用した遠隔医療など、新たな医療サービスの提供にも積極的に取り組んでいます。

創設者の理念を継承しながら、時代の変化に対応していく。徳洲会グループの挑戦は、日本の医療の未来を占う上で重要な意味を持つと言えるでしょう。今後の動向に注目が集まります。