プチ脳梗塞とは何ですか？

プチ脳梗塞（TIA）とは何か？ 見過ごせない脳の警告信号

「プチ脳梗塞」という言葉は、一般的に「一過性脳虚血発作（TIA：Transient Ischemic Attack）」を指します。これは、脳の血管が一時的に詰まることで、脳の一部への血流が遮断される状態です。しかし、脳梗塞とは異なり、その状態は短時間で回復し、通常数分～数時間以内には症状が消失します。そのため、「小さな脳梗塞」や「軽い脳梗塞」と呼ばれることもありますが、その軽さの裏に潜む危険性を軽視してはなりません。

TIAの症状は、脳梗塞と同様に多岐に渡りますが、発症する部位によって症状は大きく異なります。代表的な症状として挙げられるのは以下の通りです。

• 半身の痺れや麻痺: 顔、腕、脚など、体の片側が痺れたり、動かしにくくなったりする感覚。これは、脳の片側への血流障害が原因です。
• 言葉の障害: 話しにくくなったり、言葉が出てこなくなったり、相手の言葉が理解しにくくなる（失語症）。
• 視覚障害: 片方の目の視界がぼやけたり、物が二重に見えたりする。視野の一部が欠損することもあります。
• 平衡感覚の障害: めまい、ふらつき、立ちくらみなどが起こる。
• 激しい頭痛: 突然の激しい頭痛は、脳出血の可能性も示唆しますが、TIAでも起こりうる症状です。

これらの症状は、数分間で消えることもあれば、数時間続く場合もあります。しかし、症状が短時間であったとしても、決して軽視すべきではありません。TIAは、脳梗塞の前触れである可能性が非常に高く、放置すれば本格的な脳梗塞を発症するリスクが大幅に増加します。実際、TIAを経験した人のうち、約10～30％はその後1年以内に脳梗塞を発症するとされています。その中には、致死的となる重篤な脳梗塞も含まれます。

TIAの原因は、主に脳血管の狭窄や閉塞です。動脈硬化、心房細動、高血圧、糖尿病、高脂血症など、脳卒中を引き起こすリスク因子を持つ人は、TIAを発症するリスクも高まります。加齢もリスク因子の一つであり、高齢になるほど発症率は上昇します。

TIAと診断された場合、医師は原因究明を行い、脳梗塞予防のための治療を行います。治療法としては、血栓を溶かす薬物療法、血圧や血糖値のコントロール、生活習慣の改善などがあります。場合によっては、血管の狭窄を改善するための手術が必要となることもあります。

TIAを予防するためには、日頃から健康的な生活習慣を心がけることが重要です。具体的には、以下の点に注意しましょう。

• バランスの良い食事: 塩分や脂質の摂取を控え、野菜や果物を多く摂る。
• 適度な運動: 毎日30分程度の運動を心掛ける。
• 禁煙: タバコは動脈硬化を促進する。
• 飲酒の節制: 過剰な飲酒は高血圧や不整脈のリスクを高める。
• 定期的な健康診断: 高血圧や糖尿病などのリスク因子を早期に発見する。

もし、上記の症状が少しでも現れた場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、将来的な脳梗塞の予防、そして健康な生活を守るために不可欠です。TIAは、脳から発せられる緊急の警告信号なのです。そのサインを見逃さず、適切な対応をしましょう。