日本で1番人を殺してる生き物は？

日本で最も人を殺している生き物、それは意外にも、私たちにとって身近な存在である「ハチ」です。 年間10～20名という数字は、熊や蛇といった猛獣による死亡者数と比較しても桁違いに多く、その脅威は決して軽視できません。しかし、この事実を広く一般に知られているとは言えません。 メディアは大型動物による攻撃事件を大きく報道する傾向がある一方、ハチによる死亡事故は、個別のニュースとして扱われることが多く、その深刻さが社会全体に共有されていないのです。

ハチによる死亡事故の多くは、アナフィラキシーショックが原因です。ハチに刺された際に、体内に注入された毒素に対して、体全体が過剰に反応し、呼吸困難や意識喪失、血圧低下を引き起こします。このショック症状は、刺された直後から数分以内に発症することもあり、迅速な医療処置が不可欠です。しかし、山間部や離島など、医療機関から遠く離れた場所で刺傷事故が発生した場合、搬送に時間がかかり、救命が困難になるケースも少なくありません。

単に「ハチ」と言っても、その種類は多岐に渡り、それぞれ毒性の強さや攻撃性も異なります。 スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなど、いずれも潜在的な危険性を抱えています。 特にスズメバチは、その攻撃性と強い毒性から、最も危険なハチと認識されています。オオスズメバチなどは、その体格と強力な毒針から、複数回の刺傷を受ければ命に関わる可能性も高いのです。

しかし、ハチによる死亡事故は、必ずしも「ハチの攻撃性」だけが原因ではありません。 多くの場合、人間の行動が危険を招いていると言えるでしょう。 例えば、巣に近づきすぎる、不用意に巣を刺激する、ハチの活動が活発な時間帯に野外活動を行う、などです。 ハチは、自分たちの巣を守るために攻撃してくるため、巣の近くに近寄ったり、巣を脅かすような行動をとらなければ、刺されるリスクは大幅に減少します。

さらに、ハチ刺傷事故を防ぐためには、個々の知識と備えが重要です。 ハチの種類を識別し、それぞれの危険性を理解すること、刺されないための予防策（適切な服装、殺虫剤の携帯など）を講じること、そして、万一刺された場合の応急処置を熟知していることが求められます。 アナフィラキシーショックを起こしやすい体質である場合は、事前に医師に相談し、エピペンなどの抗アレルギー薬を携帯するなどの対策が必要でしょう。

日本の自然環境において、ハチは生態系の一翼を担う重要な存在です。 しかし、同時に、私たちにとって大きな脅威となりうる生き物でもあります。 ハチと共存していくためには、彼らの生態を理解し、適切な距離を保ちながら、安全に暮らすための知識と意識を高めていくことが不可欠なのです。 ハチによる死亡事故の現状を正しく理解し、予防策を講じることで、私たちは命を守るための第一歩を踏み出せるはずです。