揺さぶられ症候群は小刻みに揺らすと起こりますか？

揺さぶられ症候群（SBS：Shaken Baby Syndrome）は、乳幼児の脳に深刻な損傷を与える暴力行為であり、決して「小刻みに揺らす」ことで起こるものではありません。 この誤解は、SBSの危険性を軽視し、予防策の徹底を阻害する危険なものです。 本稿では、SBSの発症メカニズムと、よくある誤解を解きながら、その深刻さを改めて認識する機会としたいと思います。

一般的に「小刻みに揺らす」と認識されている行為でも、乳幼児にとっては危険な場合があります。しかし、SBSを引き起こすような激しい揺さぶりとは全く異なるものです。 SBSは、赤ちゃんを激しく前後に揺さぶることで発生します。この激しい揺さぶりが、脳の内部で脳組織と頭蓋骨が衝突し、脳挫傷、脳内出血、網膜出血といった重篤な損傷を引き起こします。 乳幼児の脳は、大人の脳に比べて柔らかく、頭蓋骨との間に比較的広い空間があり、衝撃に対する防御能力が低いのです。 そのため、大人にとってはさほどでもない揺さぶりでも、乳幼児の脳にとっては致命的なダメージとなる可能性があります。

小刻みに揺らす行為とSBSを明確に区別するために、具体的な違いを挙げてみましょう。

• SBSを引き起こす揺さぶり: 赤ちゃんを激しく前後に揺さぶる行為。腕を大きく振り回し、赤ちゃんをまるで人形のように扱うような激しい揺さぶり。この際、赤ちゃんは頭部が大きく揺れ、脳が頭蓋骨の内壁に激しく衝突します。

• 小刻みに揺らす行為: 赤ちゃんを優しく、小さな動きで揺らす行為。例えば、抱っこ紐の中で赤ちゃんを優しく揺らしたり、寝かしつけのために優しく抱いて揺らしたりするような行為。これは、赤ちゃんを落ち着かせ、安心させるための行動であり、SBSとは全く異なるものです。

しかし、たとえ「小刻み」だとしても、揺さぶる行為自体が常にリスクを伴います。 赤ちゃんは首の筋肉が未発達なため、頭部を支える力が弱く、激しい揺さぶりに耐えられません。 小刻みな揺さぶりでも、長時間の継続や、赤ちゃんがすでに体調不良であったり、脆弱な状態であったりする場合は、予期せぬリスクをもたらす可能性があります。 そのため、赤ちゃんの扱いは常に細心の注意を払うべきであり、揺さぶる行為はできる限り避けるべきです。

SBSは、泣き止まない赤ちゃんへの対応に悩む親が、衝動的に行ってしまった結果引き起こされるケースも多いと言われています。 しかし、どんなにイライラしても、赤ちゃんを揺さぶることは決して許される行為ではありません。 赤ちゃんが泣きやまない時は、一時的に赤ちゃんを安全な場所に置いて落ち着きを取り戻す、または家族や専門機関に助けを求めるなど、他の方法を模索する必要があります。

SBSは、多くの場合、目に見える外傷がないため、発見が遅れることもあります。 初期症状として、嘔吐、眠気、食欲不振、痙攣などが挙げられますが、これらの症状は他の病気でも見られるため、SBSを疑うためには医師による精密な検査が必要です。 少しでも心配な場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。

最後に、SBSは決して起こってはならない悲劇です。 予防策として、赤ちゃんを優しく扱うこと、泣きやまない時は一時的に離れて落ち着くこと、そして必要な時に周囲の助けを借りることが重要です。 SBSに関する正しい知識を身につけ、乳幼児の安全を守るための意識を高めていくことが、社会全体で取り組むべき課題です。