アメリカで右ハンドル車は違法ですか？

アメリカ合衆国において、右ハンドル車は違法ではありません。しかし、その輸入と登録に関しては、複雑な規則と微妙な例外が存在するため、単純に「合法」と断言することはできません。 多くの誤解を生み出す原因となっているのは、輸入に関する規制、特に「25年ルール」の存在です。このルールが、右ハンドル車に関する議論の中心となっています。

まず、明確にしておきたいのは、アメリカ国内で既に登録されている右ハンドル車は、合法的に走行可能です。多くの場合、これらの車両は、25年ルールを利用して輸入されたか、あるいは例外的な状況下で輸入されたものです。例えば、外交官の車両や、州によっては、特別な許可を得て輸入されたクラシックカーなどが該当します。しかし、これらの車両は、一般的な個人輸入とは異なる手続きを踏んでいることを理解しておく必要があります。

では、25年ルールとは何か？簡単に言えば、製造から25年以上経過した車両は、連邦政府の安全基準や排出ガス基準を満たす必要がないということです。これは、古い車両は現代の基準に適合させることが技術的に困難であるか、コストがかかりすぎるためです。この例外規定のおかげで、多くのクラシックカーや旧車愛好家が、日本などの右ハンドル車を輸入し、楽しむことが可能となっています。

しかし、この25年ルールは万能ではありません。25年ルールが適用される車両であっても、州によって異なる追加の検査や登録手続きが必要な場合があります。例えば、車両の安全性や適合性を確認するための検査を義務付ける州もありますし、登録費用が通常の車両よりも高くなるケースもあります。また、車両の改造が規制の対象となる可能性もあります。特に、ステアリングホイールの位置を変更するような改造は、安全上の理由から厳しく制限されています。

さらに重要なのは、製造から25年未満の右ハンドル車を輸入することは、基本的に非常に困難であるということです。NHTSA（アメリカ合衆国道路安全局）の安全基準を満たすための改造費用は莫大になる可能性があり、多くの場合、経済的に現実的ではありません。 さらに、たとえ改造費用を負担したとしても、全ての州で登録を許可されるとは限らないのです。

従って、アメリカで右ハンドル車を所有・走行するためには、25年ルールを活用するか、特別な許可を得るか、もしくは既に登録されている車両を購入する必要があります。安易に「右ハンドル車は違法ではない」という情報だけで、輸入や登録を試みることは非常に危険です。輸入を検討する際には、必ずNHTSAのガイドラインを熟読し、専門家（輸入業者や弁護士など）に相談することが不可欠です。 自己責任において、正確な情報収集と法令遵守が、円滑な輸入・登録の鍵となるのです。 誤った情報に基づく行動は、高額な費用や法的トラブルにつながる可能性があることを、常に心に留めておく必要があります。