ゴムタイヤで走る電車は日本にもありますか?

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はい、あります。札幌市営地下鉄南北線は、ゴムタイヤを使用した電車で、日本で最も古い運行例の一つです。建設は冬季オリンピックの交通整備の一環として急ピッチで行われ、予算も膨大だったと言われています。
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ゴムタイヤ方式を採用した電車が日本にある、というのは意外に知られていない事実かもしれません。 札幌市営地下鉄南北線は、その代表例であり、日本でゴムタイヤ方式を採用した地下鉄路線として、古くから運行されている貴重な存在です。 この記事では、南北線のゴムタイヤ方式への採用理由、そのメリット・デメリット、そして今日まで続くその運用状況について掘り下げて考えてみましょう。

札幌市営地下鉄南北線は、1971年に着工され、1976年の札幌冬季オリンピック開催に間に合わせるべく、まさに急ピッチで建設されました。 オリンピック開催都市としてのインフラ整備は、都市の国際的なイメージを左右する重要な要素です。 その中で、南北線は、札幌の東西を結ぶ主要な交通手段として、計画・建設されたのです。 しかし、この建設は容易ではありませんでした。 北海道の厳しい自然環境、特に凍土層の存在が大きな課題となりました。 凍土層を掘削し、安定した地盤を確保するためには、従来の地下鉄建設方法とは異なるアプローチが必要だったのです。

ここで、ゴムタイヤ方式の採用が重要な役割を果たします。 ゴムタイヤ方式は、鉄輪方式(従来の地下鉄で多く採用されている方式)に比べて、以下のメリットがあると考えられました。

  • 曲線通過性能の向上: ゴムタイヤは鉄輪に比べて摩擦係数が低いため、急なカーブでもスムーズに走行できます。 札幌市街地の複雑な地形を考慮すると、このメリットは非常に大きかったと考えられます。鉄輪方式では、急カーブに対応するために半径を大きく取る必要があり、路線延長や建設コストの増加につながる可能性がありました。
  • 振動・騒音の低減: ゴムタイヤ方式は、鉄輪方式に比べて振動や騒音が小さいと言われています。 これは、住宅密集地を走行する路線において重要な要素であり、住民への負担を軽減する効果が期待されました。 オリンピック開催期間中だけでなく、その後も住民にとって快適な交通手段であることが求められたのです。
  • 凍土対策: 凍土層における地盤沈下や凍結融解による土質変化への対応において、ゴムタイヤ方式は柔軟な対応が可能であると考えられました。 鉄輪方式では、地盤の安定化にさらに多大なコストと時間を要する可能性が高かったと言われています。

しかし、ゴムタイヤ方式にはデメリットも存在します。

  • 保守・メンテナンスコスト: ゴムタイヤは消耗品であり、定期的な交換が必要となります。 これは、鉄輪方式に比べて保守・メンテナンスコストが高くなる可能性を示唆しています。
  • 速度の制限: ゴムタイヤ方式は、鉄輪方式に比べて最高速度が低い傾向があります。これは、路線の設計や運行計画に影響を与えます。

札幌市営地下鉄南北線の建設に際しては、これらのメリットとデメリットを精査し、総合的に判断した結果、ゴムタイヤ方式が採用されたと考えられます。 冬季オリンピックという限られた時間の中で、効率的に、そして住民への影響を最小限に抑えるために、最適な選択だったと言えるでしょう。 莫大な予算が投じられたという事実も、この建設の困難さと、当時の技術レベルを考えると、理解できるのではないでしょうか。

今日、札幌市営地下鉄南北線は、多くの市民の足として、そして観光客のアクセス手段として、重要な役割を果たしています。 ゴムタイヤ方式の採用は、技術的な課題を克服し、地域のニーズに応えるための、大胆かつ先見性のある決断だったと言えるでしょう。 そして、その運用実績は、日本の地下鉄技術の進歩を物語る重要な一例として、今後も注目を集め続けることでしょう。