路側帯の中は軽車両は通行できないのはなぜですか？

路側帯は、道路の端にある歩行者用の空間です。しかし、自転車や原付バイクといった軽車両が路側帯を通行している光景を、しばしば目にします。では、なぜ道路交通法では軽車両の路側帯通行を原則禁止しているのでしょうか？単に「歩行者の安全のため」という説明だけでは不十分です。本稿では、その理由を多角的に考察し、現状の問題点についても触れていきます。

まず、最も重要なのは、前述の通り歩行者の安全確保です。路側帯は、車道と歩道を完全に分離できない状況、例えば、歩道が狭かったり、存在しなかったりする道路において、歩行者が安全に通行するための空間として機能します。軽車両が路側帯を走行すると、歩行者、特に子供や高齢者にとって、予測不可能な危険を生み出します。自転車が急に現れたり、原付バイクがスピードを出して通過したりすれば、接触事故の危険性は大いに高まります。これは、車道と歩道の間に緩衝帯がある場合でも同様です。軽車両の通行が許容されると、その緩衝帯としての役割は大きく損なわれます。

さらに、路側帯の幅は、必ずしも軽車両が安全に走行できるほど広くありません。多くの路側帯は、歩行者が通行するのに必要な最低限の幅しか確保されていません。軽車両が通行すると、歩行者が避けなければならず、かえって危険が増す可能性があります。また、路側帯は、縁石や植栽、マンホールなど、軽車両にとって危険な障害物も多い場所です。これらの障害物に接触して事故が発生するリスクも無視できません。

そして、軽車両の路側帯通行は、交通の流れを阻害する可能性も秘めています。軽車両が路側帯を蛇行しながら通行すれば、歩行者の通行を妨げるだけでなく、後続車両の運行にも支障をきたす可能性があります。特に、交差点付近やバス停付近など、交通量の多い場所では、路側帯の軽車両通行は、交通渋滞の一因となる可能性すらあります。

しかし、現実問題として、軽車両の路側帯通行は完全に排除できていません。特に、歩道が狭く、車道を通行するのが危険な場合、軽車両にとっては路側帯を通行せざるを得ない状況も存在します。このため、道路状況に応じて、路側帯の通行を許可する例外規定が設けられているケースも一部に存在します。しかし、これらの例外は、あくまでも安全が確保できる場合に限られるべきであり、無秩序な路側帯通行を許容するものではありません。

よって、路側帯における軽車両通行の禁止は、単なる規制ではなく、歩行者と軽車両双方、そして周辺の交通全体に対する安全確保のための重要なルールであると言えるでしょう。今後、高齢化社会の進展や自転車利用の増加を踏まえ、より安全で効率的な道路空間の設計と、適切な交通ルールの遵守が求められています。そのためには、道路整備による路側帯の拡幅や、軽車両用の専用の通行空間の整備、そして、利用者側の交通ルールに対する理解の深化が不可欠です。 単なる規制遵守だけでなく、安全意識の共有が、真に安全な道路環境を実現するための鍵となるでしょう。