営業利益と純利益はどちらが大事ですか？

営業利益と純利益、どちらが企業の真の価値をより的確に反映しているのでしょうか？一見すると、最終的な利益である純利益の方が重要そうに思えますが、実際には状況に応じて、営業利益の方が重視されるべきケースが多くあります。両者の違いを理解し、それぞれの指標が持つ意味を正しく捉えることが、企業の財務状況を正確に評価する上で不可欠です。

営業利益は、企業の本業における収益力を示す指標です。売上高から売上原価と営業費用を差し引いたもので、企業のコアビジネスの収益性を直接的に反映します。研究開発費、広告宣伝費、人件費など、事業を継続・発展させるために必要な費用を考慮した上で算出されるため、企業の持続的な成長力を測る上で重要な指標となります。営業利益が高いということは、企業が本業でしっかりと稼いでおり、持続的な収益基盤を築いていることを示唆しています。 例えば、急成長中のIT企業の場合、多額の研究開発投資を行っているため純利益は低くても、営業利益が堅調に推移していれば、将来的な成長への期待感を高めることができます。

一方、純利益は、営業利益に営業外収益や営業外費用、税金などを加味した後の最終的な利益です。営業利益とは異なり、本業以外の要素が大きく影響するため、企業の本業の収益力を正確に反映しているとは限りません。例えば、不動産売却益といった一時的な利益や、減損損失といった非経常的な損失が純利益に大きく影響を与え、企業の本来の収益力を歪めてしまう可能性があります。 仮に、ある企業が純利益を大きく増加させたとしても、それが本業の健全性によるものなのか、それとも一時的な利益や都合の良い会計処理によるものなのかを判断するには、営業利益を併せて確認する必要があります。

では、どちらの指標がより重要なのでしょうか？ それはケースバイケースです。

短期的な視点、特に四半期ごとの業績評価においては、純利益が重視される傾向にあります。株主への配当や投資判断に直接的に影響を与える指標だからです。しかし、長期的な視点、企業の持続的な成長力を評価する場合には、営業利益の方がより重要な指標となります。 なぜなら、営業利益は企業のコアビジネスの収益力を直接的に示し、企業が将来にわたって収益を継続的に上げられる潜在力、つまり持続可能性を示唆するからです。 投資家は、一時的な利益の変動に惑わされることなく、企業の本業の健全性を評価する必要があるため、営業利益を重視する傾向にあります。

さらに、企業の業種によっても重視される指標が異なります。例えば、不動産会社や金融機関など、営業外収益が比較的大きな割合を占める業種では、純利益よりも営業利益の推移を見る方が企業の本質的な収益力を把握する上で有効です。逆に、製造業など本業の収益が比較的安定している業種では、純利益も重要な指標となります。

結局のところ、営業利益と純利益はどちらも重要な指標であり、片方だけで企業の収益性を評価することはできません。両方の指標を比較検討し、企業の事業内容や経営状況を総合的に判断することが重要です。 それぞれの指標が持つ意味を理解した上で、両方を分析することで、より正確で深い企業評価が可能となります。 そして、その分析に基づいた投資判断や経営戦略の策定こそが、企業の健全な発展に繋がるのです。