全国の救急搬送にかかる時間は？

命をつなぐ時間：救急搬送の実態と地域格差、そして未来への課題

救急車がサイレンを鳴らし、一刻も早く病院へ患者を搬送する姿は、誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。しかし、その搬送時間の実態は、私たちが想像する以上に地域差が大きいことをご存知でしょうか。

一般的に、救急搬送にかかる時間は、救急隊が出動要請を受けてから患者を医療機関に引き渡すまでの時間と定義されます。総務省消防庁のデータによると、全国平均は約59分とされていますが、これはあくまで平均値に過ぎません。都市部と地方、あるいは過疎地域といった地理的条件によって、搬送時間は大きく異なり、時には命運を分けるほどの差が生じています。

記事冒頭でも触れられているように、東京などの都市部では救急医療体制が充実しており、救急センターへのアクセスも容易なため、搬送時間は比較的短く、平均17分程度です。一方、広大な面積を持つ北海道などの地方では、救急センター間の距離が長く、道路状況も悪いため、搬送時間が100分を超えるケースも珍しくありません。特に山間部や離島においては、ヘリコプターによる搬送が必要となる場合もあり、さらに時間がかかることがあります。

搬送時間の長短は、患者の予後に直接影響を与える可能性があります。脳卒中や心筋梗塞など、一刻を争う疾患の場合、発症から治療開始までの時間が短いほど、後遺症のリスクを軽減し、生存率を高めることができます。そのため、搬送時間の短縮は、救命率向上において非常に重要な課題と言えるでしょう。

では、地域間の搬送時間格差を解消するためには、どのような対策が必要なのでしょうか。

考えられる対策の例：

• 救急医療体制の強化: 特に地方や過疎地域における救急センターの増設や、救急医療スタッフの育成・確保が急務です。
• 搬送手段の多様化: ヘリコプターやドクターカーなどの活用を促進し、地理的制約を超えた迅速な搬送を実現する必要があります。
• ICT技術の活用: 救急現場から医療機関へのリアルタイムな情報伝達や、遠隔診療システムの導入により、搬送時間中の初期治療を可能にすることで、予後改善を目指します。
• 地域住民への啓発活動: 救急車の適正利用を促すとともに、応急手当の普及活動を通じて、救命率向上に貢献できるような環境づくりが重要です。

これらの対策は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、地域の実情に合わせた柔軟な対応と、関係機関の連携、そして何よりも国民一人ひとりの意識改革が必要です。

全国どこに住んでいても、安心して救急医療を受けられる社会を実現するために、私たちは救急搬送の実態を正しく理解し、未来への課題に向けて積極的に取り組んでいくべきでしょう。命をつなぐ時間を短縮するために、私たちができることは、まだたくさんあります。