電車を利用する人の数は？

電車を支える人々：177億という数字の向こう側

2020年度、日本の鉄道利用者はJRと私鉄を合わせて約177億人に達しました。これは、延べ人数であり、同じ人が何度も利用していることを示しています。想像してみてください。日本の人口は約1億2500万人。単純計算で、一人あたり年間140回以上電車に乗っていることになります。この数字は、日本の社会における鉄道の重要性を如実に物語っています。

しかし、この177億という数字は、ただ膨大な数である以上に、様々な物語を内包しています。通勤・通学、旅行、買い物…人それぞれ異なる目的で、異なる想いを胸に電車を利用しています。満員電車に揺られながら資格試験の勉強に励む学生、久しぶりの帰省で故郷の景色を車窓から眺める家族、初めてのデートに緊張しながら目的地へ向かう恋人たち。177億という数字は、こうした無数の個人の人生の断片が集まってできた、巨大なモザイク画のようなものです。

そして、この莫大な数の利用者を支えるために、舞台裏では多くの人々が日夜努力を続けています。運転士や車掌といった直接乗客と接する人たちだけでなく、安全運行を支える保線作業員、駅構内の清潔を保つ清掃員、時刻表や運行情報を管理するシステムエンジニア、さらには電車の製造やメンテナンスに携わる技術者など、多種多様な職種の人々が関わっています。彼ら一人ひとりの仕事が、177億という数字を支え、日本の社会を円滑に動かしているのです。

近年では、新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道業界も大きな影響を受けました。リモートワークの普及や外出自粛の影響で利用者数は減少傾向にあり、鉄道会社の経営にも深刻な影を落としています。しかし、一方でこの状況は、新たなサービスの創出や働き方の見直しといった、変化への対応を迫る契機ともなっています。例えば、オンライン会議システムの普及に伴い、移動時間を削減できるメリットを活かした、郊外への移住促進策などが注目されています。

また、環境問題への意識の高まりも、鉄道の重要性を再認識させる要因となっています。自動車に比べてCO2排出量が圧倒的に少ない鉄道は、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を担っています。今後、再生可能エネルギーの活用や省エネルギー技術の開発など、更なる環境負荷低減への取り組みが期待されています。

177億という数字は、単なる統計データではありません。それは、日本の社会を支える鉄道の重要性、そしてそこで働く人々の努力、そして未来への課題を凝縮した、重みのある数字なのです。私たちは、この数字の向こう側にある様々な物語に思いを馳せ、鉄道の未来について考えていく必要があるのではないでしょうか。 パンデミックの影響や、社会構造の変化の中で、鉄道はどのように進化していくべきか、そして私たち一人ひとりが、どのように鉄道と関わっていくべきか。177億という数字は、私たちにそう問いかけているのかもしれません。