ドルビーアトモスとドルビーサウンドの違いは何ですか？

ドルビーアトモスとドルビーサウンド：没入感の次世代への進化

映画館で感じる圧倒的な臨場感、自宅でも実現したいと願うのは多くの映画好き、音楽愛好家にとって共通の願いでしょう。その願いを叶えるべく開発された技術が、ドルビーアトモスと、より広い範囲を指すドルビーサウンドです。どちらも「良い音」を提供する技術ですが、その違いは明確に存在します。本稿では、ドルビーアトモスとドルビーサウンドの違い、そしてアトモスの魅力を深く掘り下げて解説します。

まず、ドルビーサウンドとは、ドルビーラボラトリーズ社が開発した、音質を向上させるための様々な技術群の総称です。ドルビーデジタル、ドルビーデジタルプラス、ドルビーTrueHDといった、数多くのサラウンドサウンド技術を含んでいます。これらは、従来のチャンネルベースのオーディオで、複数のスピーカーから音声を再生することで、立体的な音場を再現します。例えば、ドルビーデジタル5.1chは、センター、フロント左右、サラウンド左右、そして低音域を担当するサブウーファーの計6つのチャンネルを用いて音を再生します。これらの技術は、長年に渡り、家庭用AV機器や映画館のサウンドシステムの標準として広く採用されてきました。

対して、ドルビーアトモスは、ドルビーサウンドファミリーの中でも、特に没入感に特化した、オブジェクトベースのオーディオ技術です。これが、ドルビーサウンドとの最大の違いです。従来のチャンネルベースの技術が、各スピーカーへの音声割り当てを事前に決定しているのに対し、アトモスは、個々の音を「オブジェクト」として扱い、その位置情報（高さ、左右、前後）を自由に設定することができます。

具体的に説明しましょう。従来の5.1chサラウンドでは、例えばヘリコプターの音は、サラウンドスピーカーから一様に再生されます。しかし、アトモスでは、ヘリコプターの音が個々のオブジェクトとして扱われ、その位置情報（例えば、左前方の上空）が設定されます。これにより、ヘリコプターが実際にその位置から音を発しているかのような、より自然でリアルな音響空間が再現されます。

さらにアトモスは、天井スピーカーや、高さ方向の音を表現するための専用のスピーカーを活用します。これにより、音の高さ方向の情報も加わることで、真に3Dの音響空間を作り出すことが可能になります。映画館では、頭上からも音が降り注いでくる体験は、まさに没入感を極めたものです。自宅でも、対応したAVアンプとスピーカーがあれば、この圧倒的な臨場感を味わうことができます。

アトモスの利点は、チャンネル数の柔軟性にもあります。従来のチャンネルベースでは、チャンネル数を増やすには、対応するスピーカーとアンプを用意する必要がありますが、アトモスはオブジェクトベースであるため、既存のスピーカー構成を活かしつつ、オブジェクトの数だけ音の数を増やすことができます。そのため、既存のサラウンドシステムに追加投資を行う際にも、より容易に導入できるメリットがあります。

まとめると、ドルビーサウンドは様々なサラウンド技術の総称であり、その中にドルビーアトモスが含まれます。ドルビーアトモスは、オブジェクトベースのオーディオ技術によって、従来のチャンネルベース技術では不可能だった、真に3次元的な音響空間と圧倒的な没入感を実現する、次世代のサラウンドサウンド技術なのです。映画鑑賞や音楽鑑賞を一段階上のレベルに引き上げたいと考えているなら、ドルビーアトモスはまさにその期待に応えてくれるでしょう。