音は何種類ありますか？

音の種類、それは一口で説明できるほど単純なものではありません。音楽理論における分類「純音」「噪音」「楽音」は確かに分かりやすい出発点ですが、現実の音響世界を完全に網羅しているとは言えません。 実際、音の種類を明確に定義し分類することは、音響学、心理音響学、そして音楽学の複雑な絡み合いによって、非常に困難な課題なのです。

冒頭で述べた３分類に加えて、音の性質を多角的に捉えるために、様々な視点からの分類方法を考えてみましょう。

まず、物理的な特性に基づいた分類です。これは、音波の振動パターン、周波数、振幅、波形といった客観的な要素に焦点を当てます。

• 周波数に基づく分類: 低音、中音、高音といった分類は最も一般的です。人間の可聴範囲（一般的に20Hz～20kHz）を超えた超音波や、それ以下のインフラサウンドも、物理的には「音」として存在します。 それぞれの周波数帯域は、異なる楽器や音源に特徴的に現れ、私たちの知覚にも異なる影響を与えます。例えば、低音は胸に響き、高音は頭の方に響くといった違いがあります。

• 波形に基づく分類: 正弦波のような単純な波形を持つ純音と、複雑な波形を持つ複合音があります。 複合音は、複数の純音が重なり合って形成されており、楽器の音や人間の言葉の大部分は複合音です。 複雑な波形は、音の「色」や「音色」として私たちの知覚に影響を与えます。同じ周波数の音でも、波形が異なれば、全く異なる印象を与えます。 例えば、同じ音高のピアノの音とバイオリンの音は、明らかに異なる音色を持っています。これは、それぞれの楽器が固有の倍音構造を持つためです。

• 振幅に基づく分類: 音の強弱、つまり音量です。デシベル(dB)で測定され、物理的なエネルギーの大きさを表します。音量は、音の知覚に大きく影響を与え、音楽表現において重要な役割を果たします。

次に、心理的な特性に基づいた分類です。これは、私たちが音に対して感じる主観的な印象に焦点を当てます。

• 音色（Timbre）: 同じ音高、同じ音量であっても、異なる音源から発せられる音は、異なる音色を持ちます。これは、音に含まれる倍音の構成や、音の立ち上がり方、減衰の仕方などが影響しています。

• 音程（Pitch）: 音の高低を表す要素です。音程の違いは、音楽の旋律や和声を形成する上で不可欠です。

• 音の質感（Texture）: 複数の音が同時に鳴っている場合の音の密度や複雑さを表す要素です。単音、和音、不協和音など、様々な質感があります。

さらに、音の発生源に基づいて分類することも可能です。打楽器、弦楽器、管楽器、電子楽器など、それぞれ異なるメカニズムで音を発生させ、異なる音色を持っています。また、自然音、人工音といった分類も存在します。

このように、音の種類を明確に定義し分類することは、物理的な特性、心理的な特性、そして音の発生源といった様々な側面を考慮する必要があります。 音楽理論における３分類は、あくまで基本的な枠組みであり、実際には、無数の種類の音が存在し、それらは複雑に相互作用し合って、私たちの聴覚体験を豊かにしていると言えるでしょう。 そして、その複雑さこそが、音の研究を永遠に魅力的なものとしているのです。