ひら天は別名何といいますか？

ひら天、その呼び名いろいろ – 地域と歴史が織りなす食文化 –

「ひら天」- 薄くて平たい形が特徴的な、練り物のひとつ。魚のすり身を主原料に、野菜や香辛料などを加えて油で揚げた、日本人が愛してやまないお惣菜です。しかし、この「ひら天」、実は地域によって様々な呼び名を持つことをご存知でしょうか？

関東では「さつま揚げ」、関西では「てんぷら」と呼ばれることも多いひら天。その背景には、歴史と食文化の違いが深く関わっています。

まず、「さつま揚げ」という呼び名は、薩摩藩 (現在の鹿児島県) が発祥の地とされていることに由来します。江戸時代、薩摩藩では魚のすり身を豆腐のように固めて焼いた「つけ揚げ」が食べられていました。これが、明治時代に入り、長崎から伝わった油で揚げる調理法と融合し、現在の「さつま揚げ」が誕生したと言われています。

一方、「てんぷら」は、室町時代末期にポルトガルから伝わった揚げ物料理が起源とされています。当初は魚介類や野菜を衣で包んで揚げていましたが、江戸時代に入ると、すり身を揚げる「魚田」や「種物」といった料理が登場し、庶民の間で人気を博しました。この「種物」が、現在のひら天や、じゃこ天、ごぼう天などの原型と言われています。

このように、ひら天は歴史の中で様々な変遷を遂げ、地域ごとに独自の呼び名や調理法が発展してきました。関東では「さつま揚げ」として、甘辛い味付けで煮物やうどんの具材として楽しまれ、関西では「てんぷら」として、だし汁につけて大根おろしや生姜を添えて味わうのが一般的です。

さらに、地域によっては、「えびす揚げ」、「天ぷら揚げ」、「魚天」など、実に多様な呼び名が存在します。例えば、愛媛県ではじゃこ天が有名ですが、これも広い意味ではひら天の一種と言えるでしょう。

このように、一見同じように見える「ひら天」ひとつとっても、地域によって呼び名や調理法が異なることは、日本の食文化の奥深さを物語っています。それぞれの地域の歴史や風土に思いを馳せながら、様々な呼び名や味わいのひら天を楽しんでみてはいかがでしょうか。