飲食店の売上が落ちやすい月は？

飲食店の売上が落ちやすい月は？──ニッパチ現象と対策

飲食業界は、季節やイベントによって売上が大きく変動する、変幻自在の世界です。特に、2月と8月。この2ヶ月間は、多くの飲食店にとって売上低迷期として知られており、業界では「ニッパチ」と呼ばれるほどです。今回は、このニッパチ現象の背景にある要因と、対策について掘り下げて考えてみましょう。

「ニッパチ」現象の根源は、イベント効果の薄さと天候の影響にあります。2月は、バレンタインデーといったイベントはありますが、その効果は限られています。特に、前年比で売上を伸ばすには、それだけでは不十分であることが多いです。さらに、寒さや冬眠明けの倦怠感から、外食の機会が減る傾向があります。寒い時期、暖房の効いた室内で過ごす方が、外で食事をするよりも心地よいと感じる人が多いのは自然な現象です。これにより、客足は必然的に減少します。

8月も同様に、夏休みといったイベントはありますが、それだけでは売上を維持するのは困難な場合があります。夏休みの旅行客や帰省客などは、一定数いるかもしれませんが、それだけでは全ての飲食店の売上を維持するだけの客数には至らないことが多いです。また、夏は暑さが原因で外食意欲が低下する人が少なくありません。

売上低迷期であるニッパチは、ただ嘆くだけでなく、積極的な対策を講じる必要があります。飲食店は単なる食事を提供する場所ではなく、お客様にとっての「場」です。その「場」を魅力的にし、お客様を惹きつける工夫が必要となります。

具体的な対策としては、以下のような方法があります。

• イベント開催による集客強化：　バレンタインデー、七夕、夏祭りなど、季節やイベントに合わせた企画を実施することで、集客力を高めることができます。既存のイベントだけでなく、店独自の一日を企画することも有効です。例えば、「2月の週末は、カップル割引」や「8月には子供向けランチメニューを充実させる」といった工夫も有効です。
• 価格戦略：　2月、8月は客単価を上げるための戦略が有効です。特別なランチセットメニュー、季節限定のメニュー、お得な飲み放題企画など、低価格帯ではなく、高い価格帯のメニューに客を誘導する策もとることが考えられます。顧客が「この機会に、普段は手が出せないものを楽しもう」と考えるような価格設定やセットメニューの工夫が必要です。
• 付加価値の提供：　単純な食事提供だけでなく、特別な体験を提供することで、お客様の満足度を高めることもできます。例えば、ライブ演奏やダンスパフォーマンス、イベントスペースの提供、特別なデザートメニューなどです。
• SNSを活用した集客：　季節イベントやキャンペーン情報をタイムリーに発信することで、客足を呼び込むことができます。料理の写真や動画、雰囲気の良い店内写真なども効果的です。
• リピーター獲得：　常連客は、売上増加の重要なファクターとなります。お得なポイントカードや会員制度を設け、リピーターを育成するための施策も重要です。

これらの対策を実行に移すには、まずは客層やニーズを分析し、その地域に適した施策を選択することが重要です。競合店との差別化を図り、お客様に特別な体験を提供することで、ニッパチを乗り越え、売上増加に繋げる必要があります。

また、売上低迷期に備えて、普段からコスト削減を心がけることも重要です。食材の仕入れ価格を見直したり、無駄なコストを削減したりする努力も必要不可欠です。

ニッパチは避けられない現象ですが、適切な対策を講じることで、売上減少を最小限に抑え、さらには売上増加に繋げる事が可能です。飲食店経営者の方々は、データに基づいた戦略立案と、お客様への寄り添いにより、この課題を乗り越えていく必要があるでしょう。