アメリカ 救急車 有料 誰が払う?

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アメリカでは、救急搬送の費用は基本的に搬送された本人に請求されます。多くの人が民間の医療保険に加入しており、保険会社が費用を負担することが一般的です。ただし、低所得者や高齢者は公的な医療保険の対象となる場合があります。

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アメリカの救急車、高額な費用は誰が払う? 緊急搬送の裏に潜む経済的負担

アメリカで救急車を呼ぶと、高額な請求書が届くというのはよく聞く話です。ドラマや映画でも描かれるこの光景は、現実であり、多くのアメリカ国民にとって大きな不安材料となっています。一体、誰がどのようにこの費用を負担しているのでしょうか? 複雑なアメリカの医療システムの中で、救急搬送費用の実態を紐解いていきましょう。

まず、基本的には救急搬送を受けた本人に請求が行きます。搬送費用は地域、搬送距離、処置内容によって大きく異なり、数百ドルから数千ドル、場合によっては1万ドルを超えるケースも珍しくありません。これは日本の救急搬送が原則無料であることと大きく対照的です。

多くのアメリカ国民は、雇用主を通じて、もしくは個人で民間の医療保険に加入しています。そのため、救急搬送費用も保険でカバーされる場合が一般的です。しかし、ここで注意が必要なのは、アメリカの医療保険は日本の健康保険とは大きく異なり、複雑な自己負担制度が存在することです。

例えば、Deductible(ディダクティブル)と呼ばれる自己負担額の設定があります。これは年間で一定額を自己負担するまでは、保険が適用されないという制度です。ディダクティブルは保険プランによって異なり、数千ドルに設定されていることも珍しくありません。つまり、救急搬送費用がディダクティブルを下回った場合、全額自己負担となる可能性があります。

さらに、Coinsurance(コインシュアランス)と呼ばれる自己負担割合も存在します。これは保険適用後の医療費の一定割合を自己負担する制度です。例えば、コインシュアランスが20%に設定されている場合、保険適用後の医療費の20%を自己負担しなければなりません。高額な救急搬送費用においては、この20%も大きな負担となる可能性があります。

これらの自己負担に加え、救急搬送以外に病院での診察や治療が必要となった場合、さらなる費用が発生します。救急搬送は医療費負担の始まりに過ぎないとも言えるでしょう。

では、保険に加入していない、もしくはディダクティブルが高額で支払えない場合はどうなるのでしょうか? 低所得者層や高齢者など、一定の条件を満たす人は、Medicaid(メディケイド)やMedicare(メディケア)といった公的医療保険の対象となります。これらの保険は救急搬送費用をカバーしますが、適用範囲や自己負担額は保険の種類や個々の状況によって異なります。

しかし、公的医療保険の対象外となる中間層にとっては、高額な救急搬送費用は大きな経済的負担となります。救急車を呼ぶべきか否か、費用を心配して躊躇してしまう人もいると言われています。

近年では、救急搬送費用の高騰が社会問題化しており、透明性の向上や費用の抑制に向けた取り組みが進められています。一部の地域では、救急搬送サービスを提供する消防署がサブスクリプションサービスを導入し、年間料金を支払うことで搬送費用を無料もしくは割引にする取り組みも始まっています。

アメリカにおける救急搬送費用は、複雑な医療保険制度と絡み合い、多くの人にとって大きな課題となっています。一刻を争う緊急事態においても、費用の心配が頭をよぎる現状は、医療システムの改善が急務であることを示しています。より多くの人が安心して救急サービスを利用できるよう、更なる改革が期待されます。