「義音」とはどういう意味ですか？

「義音」とは、現実世界には存在しない、あるいは現実の音をそのまま収録することが不可能な音を、人工的に作り出した効果音のことです。映画や演劇、テレビ番組、ゲーム、アニメーションなど、様々な映像作品や音響作品において、現実感を高め、場面の雰囲気を盛り上げ、視聴者・観客の感情を揺さぶるために不可欠な要素となっています。単に音を真似るだけでなく、想像力と技術によって創り出される、いわば「演じられた音」と言えるでしょう。

「義音」という単語から想像できる通り、これは「義」＝「作り物」「人工的なもの」と「音」を組み合わせた言葉です。つまり、自然界から直接得られたものではなく、人間の創意工夫によって作り上げられた音であることを示しています。例えば、雷の音、爆発音、剣の斬撃音、宇宙船の航行音などは、その規模や状況から、そのまま収録することが困難、あるいは不可能な場合があります。これらの音をリアルに表現するために、様々な道具や技術を用いて「義音」が制作されます。

義音の制作には、驚くほど多様な手法が用いられています。例えば、金属のぶつかり合いを表現するために、様々な材質の金属板やパイプを叩いたり、擦ったりする音を使用します。風を表現するには、布や紙を揺らしたり、扇風機を使用したりします。また、近年では、コンピュータ技術の発達により、デジタル音響処理を用いて、より精緻でリアルな義音の制作が可能になっています。複雑なアルゴリズムを用いて、自然界では存在しないような、独特の音響効果を作り出すことも可能です。

義音の制作は、単なる「音の模倣」ではありません。音響効果デザイナーは、対象となる事象を深く理解し、その本質を捉え、それを音で表現する必要があります。例えば、剣の斬撃音を表現する場合、単に「金属がぶつかる音」を再現するだけでなく、剣の種類、材質、力の入れ方、斬られる対象物など、様々な要素を考慮し、それらを反映した音をデザインする必要があります。この過程には、高度な技術と、豊かな想像力、そして、細やかな表現力が必要とされます。

さらに、義音は単体で効果を発揮するだけでなく、音楽やセリフ、環境音など、他の音と組み合わされることで、より複雑で奥深い音響空間を作り上げます。例えば、激しい戦闘シーンでは、剣の斬撃音、爆発音、叫び声などが複雑に絡み合い、緊迫感や迫力が増します。また、静寂なシーンでは、かすかな風の音や虫の音などが、逆に緊張感や不安感を演出します。

「義音」は、私たちが映像作品や音響作品を鑑賞する際に、無意識のうちに感じている重要な要素です。その存在を意識することは少ないかもしれませんが、作品の世界観や雰囲気、感情移入に大きく貢献しているのです。だからこそ、義音の制作は、技術と創造性を駆使した、高度な職人技と言えるでしょう。 今後も技術革新と共に、よりリアルで、より想像力を掻き立てる「義音」が生まれることに期待したいところです。