婚姻届を提出しない場合どうなるのか？

婚姻届を出さない選択：事実婚という生き方とその影響

結婚といえば、婚姻届の提出をイメージする人がほとんどでしょう。しかし、現代社会では、婚姻届を出さずにパートナーと生活を共にする「事実婚」を選択するカップルも増えています。事実婚とは、法律上の婚姻関係はないものの、夫婦と同様の生活を送る関係を指します。では、婚姻届を提出しない場合、具体的にどのような影響があるのでしょうか？

まず、最も大きな違いは、法律上の夫婦として認められない点です。戸籍上は独身のままとなり、配偶者としての権利義務は発生しません。例えば、配偶者の相続権、配偶者控除、社会保険の扶養家族としての登録などはできません。また、パートナーの親族との法的関係も発生しないため、介護や相続に関わる問題が生じる可能性もあります。

しかし、事実婚状態であっても、一定の要件を満たせば、内縁関係として認められる場合があります。内縁関係とは、事実上夫婦として生活していることが社会的に承認されている状態を指します。内縁関係が認められると、一部の法律上の権利義務が認められることがあります。

例えば、住民票では「続柄：夫（未届）」「続柄：妻（未届）」と記載することができます。また、一部の自治体では、事実婚証明書を発行しており、これによって会社員向けの福利厚生制度や、携帯電話の家族割などのサービスを利用できる場合があります。

さらに、内縁関係は、相続においても一定の権利を認められる可能性があります。内縁のパートナーが亡くなった場合、相続人ではありませんが、一定の条件を満たせば、遺産分割請求権を行使できる場合があります。

ただし、内縁関係の認定には明確な基準がなく、裁判所の判断に委ねられる部分も大きいため、注意が必要です。特に、財産関係や相続に関するトラブルを避けるためには、公正証書を作成するなどの対策を講じておくことが重要です。

一方、婚姻届を提出しないことによるメリットも存在します。例えば、結婚による氏名変更の必要がありません。夫婦別姓を希望するカップルにとっては、事実婚は一つの選択肢となります。また、結婚に伴う親族との関係構築のプレッシャーからも解放されます。

さらに、事実婚は、結婚という制度に縛られずに、柔軟な関係を築けるというメリットもあります。お互いのライフスタイルや価値観を尊重し、より自由なパートナーシップを築くことができるでしょう。

結論として、婚姻届を提出しない場合、法律上の夫婦としての権利義務は発生しませんが、内縁関係として認められれば、一部の権利義務が認められる場合があります。事実婚は、従来の結婚観にとらわれない、新しいパートナーシップの形と言えるでしょう。

しかし、事実婚にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。そのため、事実婚を選択する際には、両者が十分に話し合い、将来を見据えた上で、慎重に検討することが重要です。自分たちのライフスタイルや価値観に合ったパートナーシップの形を選択し、より良い関係を築いていくことが大切です。特に、将来のライフプラン、子供を持つ場合の対応、財産管理、万が一の際の対応など、様々な状況を想定し、しっかりと話し合っておくことが、事実婚を成功させる鍵となるでしょう。