「いただきます」は二重敬語ですか?

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「いただきます」自体は謙譲語ですが、他の謙譲語と組み合わせて使うと二重敬語になることがあります。例えば、「お目にかからせていただきます」や「伺わせていただきます」は、謙譲語が重なっているため不適切です。代わりに「お目にかかります」「伺います」を使用するのが適切です。

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「いただきます」は二重敬語か?この一見単純な問いは、日本語学習者だけでなく、ネイティブスピーカーにとっても意外なほど複雑な問題を孕んでいます。結論から言うと、「いただきます」単体では二重敬語ではありませんが、文脈によっては二重敬語と捉えられる可能性があり、その判断は微妙なニュアンスの理解を要します。

まず、「いただきます」が謙譲語であることは間違いありません。食事に臨む際の謙虚な気持ちを表し、食物への感謝と、それを提供してくれた人々への敬意を込めた表現です。しかし、この謙譲の対象がどこに向けられているのか、そしてそれが他の謙譲表現とどのように作用するのかを検討することで、二重敬語の判定が可能になります。

「いただきます」は、自分が食物を「いただく」という行為を謙遜して表現しています。つまり、主語である「私」をへりくだらせています。一方、二重敬語とは、謙譲語と尊敬語、あるいは謙譲語同士が重複して使われることで、本来の意図とは逆に不自然で不敬な印象を与えてしまう表現です。

「いただきます」単体では、相手への敬意(尊敬語)は含まれていません。故に、尊敬語との組み合わせによって二重敬語になるというケースは考えにくいでしょう。しかし、問題となるのは、他の謙譲語との組み合わせです。例えば、「○○していただきます」という形で、「いただきます」を他の動詞の謙譲語形と組み合わせる場合です。

例えば、「明日、会議の資料をお渡しさせていただきます」という文は、丁寧な表現として広く受け入れられています。「させていただきます」は「する」という行為を謙遜する謙譲語です。「いただきます」と同様、主語をへりくだらせています。しかし、この文に「いただきます」と同様の謙譲の意図が加わると、二重敬語の危険性が出てきます。

例えば、「会議の資料をお渡しさせていただきますので、よろしくお願いいたします」は、問題ありません。しかし、「会議の資料をお渡しさせていただきますので、ご確認いただきますでしょうか」のような表現は、やや不自然に感じられるかもしれません。「お渡しする」という行為を謙譲し、「確認する」という行為も謙譲しているため、謙譲が重なり、二重敬語の疑いが生じます。

「いただきます」を他の謙譲語と組み合わせる場合、「いただきます」の謙譲の対象と、他の謙譲語の謙譲の対象が明確に異なっていれば問題ないことが多いです。しかし、両者の謙譲の対象が重なったり、曖昧になったりする場合、二重敬語とみなされる可能性が高まります。

結局、「いただきます」が二重敬語かどうかは、文脈と組み合わせる表現によって判断する必要がある、非常に微妙な問題です。単体では問題ない表現も、他の謙譲語と組み合わせることで、不自然で不適切な印象を与えてしまう可能性があることを常に意識することが大切です。 日本語の奥深さ、そしてその微妙なニュアンスを理解することで、より洗練された、そして適切な日本語表現が可能になるでしょう。