「ご来所いただく」とはどういう意味ですか？

「ご来所いただく」という言葉について：誤用か、それとも許容範囲か？

「ご来所いただく」という言葉は、ビジネスシーンやフォーマルな場面で、相手に来てもらうことを丁寧に伝えるために用いられることがあります。しかし、インターネット上では、この表現が誤用であるという意見も散見されます。本当に「ご来所いただく」は誤用なのでしょうか？

結論から言うと、「ご来所いただく」という表現は、必ずしも誤用とは言い切れませんが、使用する場面を選ぶ必要があると言えるでしょう。

まず、「ご来所」という言葉自体は、「相手が自分のいる場所に来る」という意味を持ち、敬意を表す接頭語「ご」が付いているため、丁寧な表現として成立します。問題は、それに続く「いただく」という謙譲語の組み合わせにあります。

「いただく」は、本来、自分が何かを受け取る際に、相手への敬意を込めて用いる言葉です。例えば、「資料をいただきました」というように使います。しかし、「ご来所いただく」の場合、相手に来てもらう行為は、相手が主体であり、自分が何かを受け取るわけではありません。そのため、文法的な構造としては、不自然に感じられるという意見があります。

では、なぜ「ご来所いただく」という表現が誤用とされるのでしょうか？それは、より適切な表現が存在するからです。

• 「ご来社いただく」: 企業や団体の場合、お客様や取引先に来てもらう際に最も一般的な表現です。「ご来社」は、会社に来ることを意味し、相手への敬意と同時に、場所を明確に伝えることができます。

• 「ご来訪いただく」: より広い意味で、相手に来てもらうことを丁寧に表現したい場合に適しています。「ご来訪」は、場所を特定せずに、訪問してもらうこと全般を指します。

• 「お越しいただく」: 尊敬語である「お越しになる」の謙譲語である「お越しいただく」は、相手に来てもらうことへの感謝の気持ちを含んだ、より丁寧な表現です。

これらの表現と比較すると、「ご来所いただく」は、やや曖昧で、場所が特定しづらい印象を与えます。また、文法的な構造への違和感から、相手に不快感を与える可能性も否定できません。

しかし、例えば、弁護士事務所や病院など、特定の「事務所」「診療所」に来てもらう場合、「ご来所いただく」という表現が完全に不適切であるとは言い切れません。これらの場所は、一般的に「会社」や「訪問先」とは異なるニュアンスを持つため、「ご来所」という言葉がより適切に感じられる場合もあるでしょう。

したがって、「ご来所いただく」という言葉を使う際は、以下の点に注意する必要があります。

1. 場所の性質: 来てもらう場所が「事務所」や「診療所」など、特定の施設を指す場合に限定する。
2. 相手との関係性: 親しい関係であれば、「いらっしゃる」「お越しになる」など、より親しみやすい表現を選ぶ。
3. 全体の文脈: 文脈によっては、「ご来社いただく」「ご来訪いただく」「お越しいただく」の方が、より適切で自然な表現となる場合がある。

結論として、「ご来所いただく」という表現は、完全に誤用とは言い切れませんが、使用する場面を慎重に検討し、より適切な表現が存在する場合は、そちらを選択することをお勧めします。状況に応じて、より適切で、相手に失礼のない表現を選ぶことが、円滑なコミュニケーションの第一歩となるでしょう。