なぜ171はスマホから使えないのですか？

171番、災害用伝言ダイヤル。地震や台風など、大規模災害発生時、家族や友人と連絡を取り合うための貴重な手段として知られています。しかし、多くの人が抱く疑問があります。「なぜ171はスマホから使いにくい、あるいは使いづらいと感じることがあるのか？」

確かに、171は携帯電話からも利用できます。録音再生も可能です。しかし、「使いにくい」という感覚は、システムの設計そのものと、利用者の状況のミスマッチから生まれていると言えるでしょう。その理由を詳しく見ていきましょう。

まず、最大の障壁となるのは、伝言録音時のID/パスワード設定にあります。171は、被災地の固定電話番号をIDとして使用します。これは、災害時に固定電話回線が混雑する可能性が低く、比較的安定した通信経路であるという理由からでしょう。固定電話は、災害時における情報伝達インフラとしての信頼性を依然として持っていると言えるのです。しかし、現代社会において、固定電話を所有していない世帯が増えていることは明白な事実です。特に若い世代や単身世帯では、固定電話を持たないことが一般的です。

携帯電話しか持たない人が171を利用する場合、どうすれば良いのでしょうか？ 実は、親戚や友人、近所の知人など、固定電話を保有している人の協力を仰ぐ必要があります。自分の電話番号ではなく、協力者の固定電話番号をIDとして登録し、伝言を録音・再生するのです。これは、緊急時において、迅速な情報伝達を阻害する可能性を含んでいます。協力者の連絡が取れない、もしくは協力を得られない状況下では、171の利用自体が困難になるでしょう。

さらに、ID/パスワードの取得・管理の煩雑さも問題です。災害発生時、パニック状態にある中で、落ち着いて固定電話番号を思い出し、正確に入力することは容易ではありません。また、事前に協力者と連絡を取り、固定電話番号を共有しておく必要があるため、平時からの準備が不可欠となります。この準備の手間が、171を「使いにくい」と感じさせる一因になっていると言えるでしょう。

加えて、システム自体も、現代のスマートフォンの操作性と必ずしも一致しているとは言えません。音声ガイダンスの内容や操作手順が、直感的で分かりやすいとは限らないため、操作に戸惑う利用者も少なくないでしょう。特に高齢者や、ITリテラシーが低い人にとっては、大きな障壁となります。

まとめると、171がスマホから「使いにくい」と感じる原因は、ID/パスワードシステムに起因する固定電話への依存性、災害時の緊急性と心理的負担、そしてシステム自体の操作性にあると言えます。携帯電話の普及率の向上、そして高齢化社会の進展を踏まえ、より使いやすく、誰もが容易に利用できる災害時情報伝達システムの構築が求められていると言えるのではないでしょうか。将来的には、携帯電話番号の利用を可能とするなど、システムの改善が期待されます。あるいは、171以外の、より携帯電話に適した災害時連絡手段の普及も検討されるべきでしょう。 災害時における迅速かつ確実な情報伝達は、人命救助に直結する重要な要素です。その観点から、171の現状と課題を改めて認識し、より良いシステムへの改善を強く望むべきです。